第1章
第1章
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エイト「そっか…。大変だったね。いきなり知らない所に来てびっくりしたよね?」
『うん…。それに私の住んでた所はモンスターもいないし、魔法だって使えない。』
エイトの話によるとこの世界にはモンスターがいるのは当たり前らしい。魔法も全ての人が使えるわけではないけどちゃんと存在してる。
エイト「そうなの?じゃあますます不安になるよね。でも、モンスターも魔法もない世界かぁ…。平和でいいね。」
『う、うーん…。どうなんだろ。モンスターがいないっていう面では平和かもしれないけど…。ある意味危険な世界だよ。』
エイト「モンスターがいないのに危険なの?どういうこと?…ていうかごめん、何も分からなくて」
『ううん!いいの!話せただけで随分スッキリしたから。』
エイト「よくないよ!話聞いてるとやっぱりミキが住んでた所はこの世界ではないみたいだし、帰り方が分からないだろ?」
『それなんだよね…。旅してるエイトも分かんないんじゃ、きっと他の人に聞いても同じだろうし…』
エイト「あっ!!」
うーんと唸って考えていると、突然声を上げたエイト。
少し驚いて肩が跳ね上がってしまった。
『ど、どうしたの?』
エイト「そうだ、ルイネロさんだ!ルイネロさんに会いに行こう!」
『るいねろさん?誰?』
エイト「僕が前に旅の途中で少しお世話になった人なんだ。まぁ実際僕らの方がお世話した側って言ってもいいんだけど。よく当たる占い師だから何か分かるかもしれない。」
『ホント!?よかった。少しでも手がかりがあって…。』
エイト「まだどうなるか分からないけど、とりあえず今日はゆっくり休んで明日の朝出発しよう。」
『うん!』
エイト「じゃあ僕はそろそろ部屋に戻るよ。おやすみ。」
『あ、ま、待って!』
私は部屋を出て行こうとするエイトに慌てて声をかけた。
勢いが良過ぎたのか、立ち上がった拍子にガタッと椅子が倒れかける。
そんな私に、エイトは苦笑しながら振り返って次の言葉を待ってくれていた。
『今日は話を聞いてくれてありがとう。あと、様子を見に来てくれて嬉しかった…。本当にありがとう。』
何だか恥ずかしくて、少しうつむき加減ではあったが今日のお礼をちゃんと言った。
するとなぜかエイトは少し驚いたような顔をして止まっていた。
ちょっと頬が赤いのは気のせいだろうか。
『…?どうかした?』
エイト「あ、いや、うん。僕の方こそ大して力になれなかったけど話してくれてありがとう。…じゃあおやすみ。」
『うん、おやすみ。』
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バタン…
エイト「ふぅ…。」
びっくりした。いきなりお礼言うから。
しかも俯き加減に赤くなりながら言うなんて反則だ。
不謹慎ながらちょっと可愛いなんて思ってしまった自分が恥ずかしい。
そんな考えを掻き消すようにして、先程の会話から得た情報を思い出す。
本人は話してスッキリしたと言っていたが、まだまだ不安があるだろう。
エイト「…よし、何があってもミキを守ろう。」
僕は拳をぎゅっと握り、自分自身に強く言い聞かせるようにして誓った。