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ぽやぽやしている。いや、それを認識できるくらいにはしっかりしている。空気に酔った気配もあるけど、精神面の影響が大きい気がする。 「ふふ、きれい」 「イズがそんなに好きだなんて知らなかったわ」 「好き。大好き。前はそんなことなかったけど、今はめちゃめちゃきれいに見えるの」 湯船の縁に寄りかかって、舞い散る様を眺める。どうにも、儚いという形容詞は似合わない。一昨日もそうだった。丸一日見てても退屈しなかった。 「なんかねえ、イゾウさんみたいだなって」 「桜が?」 「うん」 きれいで、媚びるでもなくて、勝手に咲いて、勝手に散って。でもその勝手な様がどうしようもなくきれいで。…きれいで? 「待って今のなし」 「あら、どうしたの?そのまま続けて?」 振り返れば、姉さんが揃って柔らかな笑みを浮かべていた。待って。やめて違う待って。やめて。 「イズ?どの辺がイゾウみたいだと思ったの?」 「違う!…いや、違うくないけどそうじゃなくて!」 「あんまり否定すると真実味が増すわよ」 「だっ、…」 「そこで素直に黙っちゃうのがイズの可愛いところよね」 「その可愛い顔を、イゾウに見せられないのが残念でならないわ」 やめろ。いなくて良かったと思ってる真っ最中なのに。こんなん聞かれて堪るか。只でさえ、…何かおかしなことになってるのに。 「…ちょっと口が滑っただけなんだってば」 「口が滑って出てくるのは本音よね」 「やめて」 「いいじゃない。わたしたちしかいないわよ?」 「そうだけど…」 そうだけどさ。だからってそんなにこにこしないでよ。そりゃあね。他人事だったら楽しいよ。わたしだって同じことする。同じことするから文句も言いにくいんだけど、やめて。まさかとは思うけど絶対人に、イゾウさんに言わないで。 「本人に言ったら喜ぶわよ」 「やめて。言わないで」 「あら、わたしたちは言わないわ。イズが言うからいいんじゃない」 「…死んでも言わない」 そもそも誰に言うつもりもなかったんだから。ちょっと酔っただけ。もう醒めたけど。醒めたのに、逆上せてる気分。 *** 「リリーたち、まだ入ってたの?さっき脱衣所でイズに会ったわよ」 「逆上せたからって、先に上がったのよ」 「あら、一人で大丈夫?」 「どうせイゾウが一緒よ。ねえ、お兄様方?」 「げっ、まじかよ!」 「いつから…っ」 「聞き耳立てるなんて悪趣味ね」 「いつもうるさい癖に、こういう時だけは静かなんだから」 |
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