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扉を開ければ、久々のお天気。…では、ないけれど。曇り。でも、ここ暫くずっと雨か嵐かだったから。最早快晴と言っても過言ではない。…過言か。

「おいおい、聞き捨てならねェな?もう一遍言ってみろ!」
「あァ?事実だろ!何だよ、自分とこの隊員だから庇ってんのか?」
「お前ら、イズに手伝って貰ってる癖によく言えたな!」

え、何。わたしの話?本人いるとこでやっちゃう?それとも、そんなにわたしの存在感薄い?

怒鳴りあってるのはロハンさんと他16番隊数名と、…誰だ。顔はわかるけど名前は知らない。ロハンさんが怒ってるところなんて初めて見た。嬉しい。ガザさんなんかはすぐ頭に血が上るけどね。
たぶん、そういう時期なんだと思う。ジオンもそうだし。わたしを知らない若手諸君が、って言うの?先輩になんかなりたかないけど。

「他にできることがねェって言うから仕事を分けてやってんだろ!」
「雑用だって、所詮人並みにしかできませんしね」
「それどころか、重い物なんか持てねェんだから人並み以下、…は?」

視線がぐるっとわたしを向いた。何さ。続きをどうぞだよ。遠慮しないで、じゃんじゃん言って。

「何で本人が入ってくんだよ!」
「面白そうだったんで。加勢しますよ?」
「加勢すんならあっちだろ!」
「えー、わたし自分の良いところなんか出てきませんもん」

向き合ったロハンさんが困った顔をしている。頑張れ。頑張ってわたしを褒めてくれ。

「ほら、何怖じ気づいてるんですか?本人がいるんだから、怖いものなしでしょうよ」
「いや、お前、」
「ああ、こういう空気が読めないところとかも短所ですよねえ?相手が困ってようと嫌がってようと、自分のやりたいことを優先しちゃう自己中心的な態度とか?」
「そんなん海賊だったら普通だろ!つーか、イズはおれたちが嫌がることはしねェ!」
「いや、おれたち今困ってんだけど!?」
「お前らは自業自得だろ!イズのこと馬鹿にしやがって!」
「馬鹿にされるだけの材料があるんですよ。火のない所に煙は立たないんですから」
「そんな短所の一つや二つ誰にだってあんだろ!」
「一つや二つじゃきかないんですよ、わたしの場合。そもそも、海賊船に乗る上で必須の条件を満たしてないんですから」
「んなもんあるか!」
「あるでしょう。最低限身を守る術くらいは持ってないと迷惑ですよねえ?」
「そ、そうだな。危ねェからな」
「自分の身だけじゃ飽き足らず、家族まで危険に晒す可能性があるんですよ?罵られて然るべき、寧ろ今まで誰も何にも言わなかったのが不思議です」
「この船じゃ、オヤジが良いって言ったら良いんだよ!」
「お前みたいな小さいガキに巻き込まれるような間抜けじゃねェぞ!」
「イズはガキじゃねェ!」
「子供と見紛うような体型なんだから仕方ないでしょう?その上、背も低いとくれば十かそこらの子供と変わらないのでは?」
「そこまでは言ってねェ!」

あれ、そう?流石に十はない?何だかしっちゃかめっちゃかになってきたね。あんたらどっちの味方よ。

「イズはちゃんと胸も尻もあんだよ!この前の水着姿見てりゃわかんだろ!」
「いや、知らねェよ!」
「姉さんには大分見劣りしますよねえ。色気が足りない」
「小さいやつには小さいやつの良さがあんだよ!」
「小さい子供が許されるのは可愛いからですよ?わたしが可愛く見えます?見えないでしょう」
「へェ?」
「そもそも、負けん気ばっかり強くて、口ばっかり生意気じゃあ可愛げすら行方不明って感じ、…です、けど、…ね?」

頭に乗った手に、心臓がきゅ、と悲鳴を上げた。青ざめるってこういう感じなんだろうか。怖くて後ろを振り向けない。何か、すごく怒ってる感じがする。

「おれのイズルを馬鹿にしてんのはどの口だ?」
「あっ、えっと、」
「おれはやめろって言ったよなァ?」
「…ごめんなさ、」
「謝んなくていいさ。言い聞かせんのが足りなかったんだろ?」
「いや、あの、」
「お前ら、イズルに仕事分けてやってるって言うんなら、次から手伝いはいらねェな?」
「す、すいませ、」
「おれに謝ったってしょうがねェだろ」

わたしが加勢してた側の兄さんがわたしに向かって眉を下げる。すごいなあ。こうやって諌めちゃうんだから。わたしじゃ無理。

「イズ、悪かった。…その、本当はすげェ助かってんだ。また手伝ってくれ」
「…まあ、役に立ってるなら」
「おれの気分次第だけどな」

えっ、そうなの?わたしの行動ってイゾウさんの気分次第で制限されんの?まじ?



***

「…お前ら、何であんなこと言い出したんだよ」
「…いや、その…何でイズがイゾウ隊長と付き合ってんだって話になってよ」
「イゾウ隊長の猛アプローチだよな」
「押して押して押したな」
「そりゃ、お前らは一部始終知ってんだろうけどさ」
「おれたちはよく知らねェし。それこそ、キアラの方が美人だし、医術的な知識もあるだろ?」
「キアラ?何でキアラが出てくんだよ?」




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