136 |
扉を開ければ、久々のお天気。…では、ないけれど。曇り。でも、ここ暫くずっと雨か嵐かだったから。最早快晴と言っても過言ではない。…過言か。 「おいおい、聞き捨てならねェな?もう一遍言ってみろ!」 「あァ?事実だろ!何だよ、自分とこの隊員だから庇ってんのか?」 「お前ら、イズに手伝って貰ってる癖によく言えたな!」 え、何。わたしの話?本人いるとこでやっちゃう?それとも、そんなにわたしの存在感薄い? 怒鳴りあってるのはロハンさんと他16番隊数名と、…誰だ。顔はわかるけど名前は知らない。ロハンさんが怒ってるところなんて初めて見た。嬉しい。ガザさんなんかはすぐ頭に血が上るけどね。 たぶん、そういう時期なんだと思う。ジオンもそうだし。わたしを知らない若手諸君が、って言うの?先輩になんかなりたかないけど。 「他にできることがねェって言うから仕事を分けてやってんだろ!」 「雑用だって、所詮人並みにしかできませんしね」 「それどころか、重い物なんか持てねェんだから人並み以下、…は?」 視線がぐるっとわたしを向いた。何さ。続きをどうぞだよ。遠慮しないで、じゃんじゃん言って。 「何で本人が入ってくんだよ!」 「面白そうだったんで。加勢しますよ?」 「加勢すんならあっちだろ!」 「えー、わたし自分の良いところなんか出てきませんもん」 向き合ったロハンさんが困った顔をしている。頑張れ。頑張ってわたしを褒めてくれ。 「ほら、何怖じ気づいてるんですか?本人がいるんだから、怖いものなしでしょうよ」 「いや、お前、」 「ああ、こういう空気が読めないところとかも短所ですよねえ?相手が困ってようと嫌がってようと、自分のやりたいことを優先しちゃう自己中心的な態度とか?」 「そんなん海賊だったら普通だろ!つーか、イズはおれたちが嫌がることはしねェ!」 「いや、おれたち今困ってんだけど!?」 「お前らは自業自得だろ!イズのこと馬鹿にしやがって!」 「馬鹿にされるだけの材料があるんですよ。火のない所に煙は立たないんですから」 「そんな短所の一つや二つ誰にだってあんだろ!」 「一つや二つじゃきかないんですよ、わたしの場合。そもそも、海賊船に乗る上で必須の条件を満たしてないんですから」 「んなもんあるか!」 「あるでしょう。最低限身を守る術くらいは持ってないと迷惑ですよねえ?」 「そ、そうだな。危ねェからな」 「自分の身だけじゃ飽き足らず、家族まで危険に晒す可能性があるんですよ?罵られて然るべき、寧ろ今まで誰も何にも言わなかったのが不思議です」 「この船じゃ、オヤジが良いって言ったら良いんだよ!」 「お前みたいな小さいガキに巻き込まれるような間抜けじゃねェぞ!」 「イズはガキじゃねェ!」 「子供と見紛うような体型なんだから仕方ないでしょう?その上、背も低いとくれば十かそこらの子供と変わらないのでは?」 「そこまでは言ってねェ!」 あれ、そう?流石に十はない?何だかしっちゃかめっちゃかになってきたね。あんたらどっちの味方よ。 「イズはちゃんと胸も尻もあんだよ!この前の水着姿見てりゃわかんだろ!」 「いや、知らねェよ!」 「姉さんには大分見劣りしますよねえ。色気が足りない」 「小さいやつには小さいやつの良さがあんだよ!」 「小さい子供が許されるのは可愛いからですよ?わたしが可愛く見えます?見えないでしょう」 「へェ?」 「そもそも、負けん気ばっかり強くて、口ばっかり生意気じゃあ可愛げすら行方不明って感じ、…です、けど、…ね?」 頭に乗った手に、心臓がきゅ、と悲鳴を上げた。青ざめるってこういう感じなんだろうか。怖くて後ろを振り向けない。何か、すごく怒ってる感じがする。 「おれのイズルを馬鹿にしてんのはどの口だ?」 「あっ、えっと、」 「おれはやめろって言ったよなァ?」 「…ごめんなさ、」 「謝んなくていいさ。言い聞かせんのが足りなかったんだろ?」 「いや、あの、」 「お前ら、イズルに仕事分けてやってるって言うんなら、次から手伝いはいらねェな?」 「す、すいませ、」 「おれに謝ったってしょうがねェだろ」 わたしが加勢してた側の兄さんがわたしに向かって眉を下げる。すごいなあ。こうやって諌めちゃうんだから。わたしじゃ無理。 「イズ、悪かった。…その、本当はすげェ助かってんだ。また手伝ってくれ」 「…まあ、役に立ってるなら」 「おれの気分次第だけどな」 えっ、そうなの?わたしの行動ってイゾウさんの気分次第で制限されんの?まじ? *** 「…お前ら、何であんなこと言い出したんだよ」 「…いや、その…何でイズがイゾウ隊長と付き合ってんだって話になってよ」 「イゾウ隊長の猛アプローチだよな」 「押して押して押したな」 「そりゃ、お前らは一部始終知ってんだろうけどさ」 「おれたちはよく知らねェし。それこそ、キアラの方が美人だし、医術的な知識もあるだろ?」 「キアラ?何でキアラが出てくんだよ?」 |
prev / next 戻る |