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面倒くさいことになっている。何考えてんだこの人。今まで、そんな絡んで来たことなんかなかったのに。

「イズ、お昼ご一緒してもいいかしら?」

何で?why?何を思ってわたしに声かけてんの?言うなら、あなたがお好きなイゾウ隊長の彼女ですが一応。

どうぞどうぞ、と。でれでれしたゼイフラさんが勝手に返事をする。他何人か、満更でもなさげに頬を染めている。見たくねえ。兄さんたちの夜事情なんか知りたくねえ。それどういう心理?誰と共有してるかわかるってどんな気持ち?

「…席移るか?」
「そんな露骨な真似しませんよ」
「そうか」
「ロハンさんも参加してどうぞ?」
「いや、おれはいい」

わたしの味方はロハンさんだけか。顰めっ面はしてるけど、ジオンは味方じゃないもんな。嬉しいけど、それはそれで心配だぞ。

会話は既に今日の夜の予定の話になっている。早いんだよ。まだ昼間だよ。そういうのは余所でやってくれ。ご飯が不味くなる。

「イズはイゾウ隊長とどう?」
「は?」

突然振られた会話に、素が出た。キアラさんは、わたしに声はかけてもわたしと話そうとはしない。わたしと一緒にいる兄さんが目当てなだけで。それが。突然話を振ったかと思えば、何だ。嫌がらせか。

「…どう、とは?」
「イズったら、わたしに言わせるの?でも…そうよね。優しくしてくれるからすごく気持ちいいんだけど、イゾウ隊長のって大きいから」

わたしに?言わせるの?あんたが勝手に始めた話題なのに?血管て、こういう時に切れるのかなあ。まじで、この、女は。おめでとう。大嫌いにランクアップだ。

がたん、と椅子が音を立てた。吐きそう。まだ半分しか食べてないのに。

「ロハンさん。食べかけで申し訳ないんですけど、良かったらどうぞ?余るようならエースさんにでもあげてください」
「イズ、」
「ごちそうさまでした。残してごめんなさい」

この、あばずれ。椅子を直して、食堂の扉を閉める。なるたけ静かに。物に当たるような、そんな愚か者になりたくない。あー、苛々する。刺し殺してやりたい。



***

「照れちゃったのかしら」
「あー、いや、うん。だといいけどな」
「イズったら、意外と初心なのね。もしかして、まだしてないのかしら?」
「おい、その辺にしてくれ。イズはそういうの好かねェんだよ」
「あら、そうだったの…ごめんなさいね」




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