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また増えた。いや、別に増えるのは全然いい。皆で飲むの楽しい。只、今このタイミングで増えられるのは些か都合が悪い。もうこの話題やめようよ。誰が楽しいの。

「イズのいいとこ?いっぱいあんだろ」
「例えば?」
「掘り下げなくていいです」
「例えば…あー、めちゃくちゃ優しい」
「はあ?」

思わず。思わずだ。わたしが優しいなんてそんなことあるかい。わたしはめちゃくちゃ自分勝手だぞ。自分のしたいことしかしたくない。

「ラクヨウと、…何か言い合いになったことあっただろ」
「どれですかね」
「顔突き合わせりゃ喧嘩してるからねい」
「色んなもんには限りがあるみたいな話だったんだけど、何だっけなァ…おれたちが喜ぶんなら何でもするみたいなことを言ったんだよ」
「何でもするはない。絶対ない」
「酌の話じゃなかったか?」
「たぶんそれです」
「まァ、何でもいいんだけど。それってよ、限りあるもんをおれたちに使ってくれるってことだろ?」

…あっ、待って、この話めちゃくちゃ恥ずかしいやつ。待って。やめて。

「エースさん、ストップ」
「ん?どうした?」
「その話地雷です」
「地雷?…あァ、そうやって恥ずかしがってる顔、めちゃめちゃ可愛いよな」
「うるさい」
「イズがうるさいって言う時は大体照れてたりする時だしなァ」

この、本当にこの人は。口を閉じろ。若しくは寝てしまえ。得意でしょ。話してる最中に突然寝落ちするの。

「おれは怯えた顔のが好みだよい」
「はあ?」
「否定はしねェ」
「えー、おれ見たことない」
「おれは、…怯えてるとはちょっと違うよなァ」

おい、こら。各々何思い出した言ってみろ。性癖暴露大会じゃないんだぞ。この流れはちょっとやだ。だって、わたしが怖い思いする流れじゃない?やだよ。誰が好き好んで怖い思いしたがるのさ。ホラー映画観に行く人とは相容れない人種だぞ。

「イズル、怖かねェよ」
「…どの口が」
「まだ根に持ってんのか」
「勿論」

正直忘れてたけどな。覚えてたいことがいっぱいあって、脳みそが足りない。大容量ハードディスクが欲しい。

「…悪かった。もう二度としねェよ」
「別に本気で根に持ってるわけじゃないです」
「それでも、まだ許してもらってねェからな」
「もういいですってば」

んん…。たぶんマルコさんの見たいものは、もう見られないと思うんだ。だって、イゾウさんと一緒だと怖くない。何か、肝試しも行けそうな気がする。行かないけど。



***

「…おれイゾウといる時のイズルの顔好きじゃないかも」
「あ?可愛いじゃねェか。安心しきっちまってよ」
「だからだろ?おれたちだけじゃあ、あの顔しねェからなァ」
「別に安心してるイズルは可愛いんだけど、その相手がイゾウってのがむかつく」
「ここにいる誰より短気な癖にねい」




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