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星がきれいだ。今日は月も出てないから。どれが何かはわかんないけど。日の出とかも見てみたいなあ。日の入りはよく見るけど、早朝は起きてられる自信がない。

「そもそも、何でそんな話になったんだよい」
「え?…ああ、イズルが付き合ったことないって言うから」
「…げほっ、…はあ?」

大丈夫ですか。背中叩きましょうか。そんな噎せるほどですか。何ですかその目は。いや、本当に、どういう気持ちよ。

「本当かよい」
「本当ですよ」
「はあ…そりゃ自覚もねェわけだよい」
「ちょっと、何でそんな溜め息吐くんですか」
「イズルの国の男は不能か?」
「知りませんよ。そんなわけないじゃないですか」
「お前、幾つだって?」
「22です」
「22ねい…」

うるさいな。繰り返さないでよ。別にわたしが標準じゃないわ。事これに関しては。たぶん。

「イズルは可愛いよい。すぐ顔に出るとことかな」
「…そんなに出てます?」
「態度にも出るぞ」
「それこそ、イゾウが手ェ出してなきゃおれが口説いてた」
「…その定型文何なんですか」
「考えることは一緒ってことだろい。イゾウも、おれも、ハルタもサッチもな」
「別にサッチさんからは口説かれてません」
「お、おれのも聞きたい?」
「いいです」
「一番最初があれだからなァ、正直、こんな細くて軽くて平気かと思ったんだけどな。自分で鱗抜くわ、酌に金取るわ、意外にしゃんとしてるし、物怖じしねェし、面白ェなァってのが最初だな」
「サッチ、長い」
「ハルタには言われたくねェよ」
「わたし、いいって言わなかったですっけ…?」
「まァ、聞けって。お前、見張り台から飛び下りようとしたことあったろ?」
「は?」
「何それ、知らないんだけど」
「イゾウにけしかけられてな。イズはすぐ普通だって言うけどよ、そういう度胸とか、律儀に礼が言えるとか、好きって何か考えて知恵熱出すとか、そういうのを普通って言えんの、おれはすげェと思うんだよ」
「…イズルそんなこと考えて熱出してたの?」
「それはおれも聞いてねェよい」
「聞き流してください」
「一番はさ、飯食った後、皿下げに来んだろ?イズ、毎回美味しかったって言うんだよ。あれ、超嬉しい」
「普通ですってば」
「普通じゃねェよい」
「おれ言ったことない」
「な?イズの普通ってすげェのよ」

…何か、普通にいっぱい褒められた。ちょっと嬉しい。ちょっとというか、とっても嬉しい。



***

「うおっ、…お?マルコどうした?」
「あっちでハルタ隊長とかと話してるぞ」
「…何か、随分静かだな?」
「食堂で飲んでるってさ」
「ふーん、おれも行ってこよう」
「おー、おれも避難してェから助かる」
「避難?」




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