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マチが寝るのと一緒に引き上げようとして失敗した。失敗というか、別にいいっちゃいいんだけど。わたしの我儘なのに姉さんに任せっぱなしで申し訳ない。

「あら、いいのよ。主役が二人とも抜けちゃ、寂しいもの」
「それに、昼間いっぱい寝てるから眠れないでしょ?」

そう言ってわたしを置いていく。そんなことないよ。夜は夜で眠たい。

「じゃ、問題ないよね?」
「…はあい」

ハルタさんに呼び止められるなんて滅多とない。正直、嫌な予感しかしない。実は性格悪い代表。どんなご用でございましょ。

「実際のところ、イゾウとはどうなの?」
「どう、とは…?」
「どこまでいってんの?」
「どこまで…」
「あ、もっとストレートに聞いたほうがいい?セック、」
「大丈夫です結構です流石にわかります!」

やめてよ。まだ起きてる兄さんたち多いんだよ。めちゃめちゃ恥ずかしいじゃんか。勘弁してくれ。

「…それ、わたしに聞きます?」
「イゾウに聞いてもはぐらかされるしね。その点、イズルは顔に出るから分かり易いし?」

…この野郎。何で今いないの。いっつも気がついたらいる癖に。

「ま、大体見てればわかるけどね」
「…なら聞かなくたっていいじゃないですか」
「だって絶対面白い反応するのに、聞かないなんて勿体ないじゃん」
「悪趣味」
「イゾウと似たようなもんじゃない?」

…まあ、否定はしない。イゾウさんもそういうところはある。別にイゾウさんに限らず。マルコさんとかもそのタイプ。相手の反応見て楽しむタイプ。で、どちらかと言えばわたしも気持ちはわかる。

「やなの?」
「はい?」
「だからイゾウとセッ、」
「言わなくていいです」

本当に、本当に本当に性格悪い。別にそこまでピュアじゃないですよ。じゃないけど。そんな堂々と話せるほど慣れてないよ。だってそんな話する相手いなかったもの。

「…その話ここでするんですか?」
「おれの部屋でもいいよ?」
「そっちの方がいい」
「へェ?じゃあ、おれの部屋来る?いいよ?朝まで、二人っきりでお話しようか」
「待って。流石に含みがあり過ぎてちょっと」
「イズルのそれは何なの?只の考えなしじゃないよね?考えてないふりしてんの?それで予防線張ってるつもり?」
「ざっくざく来るじゃないですか」
「だってほら、おれって親切だからさ。イゾウが我慢できなくなる前に教えといてあげようと思って」
「親切…?」
「そこじゃない」

いや、うん。つい。ハルタさんの視線が痛い。こう、鋭いってより、見て見ぬふりしてくれればいいところを直球で殴ってくる感じ。わたしだって、自覚はある。

「我慢なんかしてるんですか、あの人」
「…それ、本気で言ってる?」
「だって、わたしは別にそういう魅力ない」

あっ、くそ。言ってて悲しくなってきた。いつものことじゃん。わかってることだもん何ともないもんね!



***

「珍しいな。行かねェのか?」
「今行ったらイズルが可哀想だからな」
「はーん、ならおれ行ってこようっと」
「泣かせたら承知しねェぞ」
「それ、おれよりハルタに言った方がいいんじゃねェの?」




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