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夜明け待つ僕ら



 なかなか寝付けないまま、もう何度目かわからない寝返りを打つ。とてもじゃないけれど眠れる気がしないから、いっそ外の空気でも吸いに行こうか。そう考えた私は、皆が寝静まったアジトをそっと抜け出した。いつどこで他の組織からの敵襲があるかわからないので、どうせアジトの近くだからと油断はせず、きちんと装備をした上で。
 アジトの外も酷く静かだった。そんな静寂の中でふと見上げれば、そこには綺麗な星空が広がっていた。荒れ果てているこの世界でもまだ綺麗なものがあるんだなぁと思いながら、ただぼんやりとそれを見つめた。

「起きていたのか」

 どのくらいの時間、そうしていただろうか。聞こえてきた声に振り返ると、そこにはリーベルの姿があった。彼はこちらに歩いてくると、遠慮なくどさりと隣に腰掛けた。

「ちょっと寝付けなくて。リーベルこそどうしたの?」
「少し目が覚めてな。外の空気を吸いに来た」
「そっか」

 そこで会話は途切れ、再び視線を上へと戻した。数多の星が輝いている濃紺の空には、雲の一つも浮いていない。空に浮かんでいる街、アーク以外は。

「……外に出ないでクウラの仕事でも手伝ってあげればよかったかな。うちの参謀、そろそろストレスがやばそうだし」
「そのうち発散するんじゃないか? 派手に爆発させて」
「それはそうなんだけど……他人事だなぁ、ストレスの元凶は」

 リーベルは全く気にしていないどころか、むしろまた何かクウラに苦労をかけそうな予感がしたので、参謀役のフォローを頑張ろうと心に誓った。
 だけど、真っ直ぐに自分の道を突き進んでこそ、私達リベリオンのリーダーだから。ハラハラさせられることの方が多いけれど、ブレない信念を持っているリーベルだから、私は惹かれて好きになったのかもしれない。

「……ねぇ、リーベル。もしも、私が死んじゃったとして」
「突然なんだ。縁起でもない」
「まぁ最後まで聞いてよ。それでね、私がどこかのタイミングで死んじゃったとして。忘れないでいてほしいの、私のこと」

 争いが絶えないこの世界では、常に死と隣り合わせで生きている。明日も生きていられるかわからなくて、今日死ぬかもしれないという恐怖を心のどこかで感じながら。
 だからというわけでもないけれど、私はこの気持ちをリーベルに伝えるつもりはない。でも我儘が許されるのであれば、私という人間が生きていたことを覚えていてほしいんだ。他の誰でもない、好きな人であるあなたに。

「当たり前だろう。なまえのことを忘れるつもりはないし、絶対に忘れない。俺が死ぬまで、ずっと覚えてるよ」
「ふふ、リーベルに覚えていてもらえるなんて光栄だなぁ。……ありがとう」

 彼の記憶の中に残り続けてくれるのなら、私のこの気持ちもきっと報われることだろう。まぁ実際は、その時になってみないとわからないのだけど。
 頭上に広がる空はまだ暗く、夜が明けるまでには時間がかかりそうだ。夜が明けて朝が来ても、リーベルや仲間が生きて一日を終えられますように。そう願いながら、悲しいほどに綺麗な星空を見つめ続けるのだった。

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