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両片想いエンディング



 異性と二人でどこかへ出掛けるとなれば、それはおそらくデートなのかもしれない。だけどその相手が相手だけに、そういった期待はしちゃいけない気がしていた。期待をするだけ無駄だって、どうせ傷付くだけだってわかっているから。
 フェイス・ビームス。彼が来る者拒まず去る者追わずスタイルで、同時に付き合っている女の子が何人もいる遊び人だということは割と有名だ。そんなフェイスくんと二人で出掛けるのだから、浮かれて期待なんかしないように気をつけなければならない。今まで頑張って隠してきたこの気持ちがバレてしまわないように。これからもただの女友達でいられるように。
 待ち合わせ場所に着くと、約束していた時間よりも十分ほど早いというのに既にフェイスくんの姿があった。彼はきっと、他の女の子が相手の時でも待ち合わせの時間より早く来ているのだろう。相手の女の子を待たせないために。そういうところもモテる理由の一つなんだろうなと思いながら、彼の元へと歩いていく。

「お待たせ、フェイスくん」
「全然待ってないよ。俺も今来たところだから」

 それじゃあ行こうかと言葉を続けたフェイスくんは、流れるような仕草で私の手を取り、そのまま歩き始めた。繋がれた手に引っ張られるようにして私も歩き始めたものの、突然のことにちょっと理解が追いつかない。いやだって、手を繋いで歩くなんてカップルみたいで。別に私達は付き合っているわけではないので、残念ながらカップルではないのだけど。

「あの、手……!」
「ああ、はぐれちゃったら困るでしょ?」

 そう言った彼は、歩く速度を少し落として私の隣に並んだ。どうやら歩幅を私に合わせてくれているらしい。繋がれている手といい、歩幅を合わせてくれていることといい、うっかり勘違いしてしまいそうになるから困る。だけど好意と優しさは無下にできないので、なるべく平常心を保てるよう意識しながら、このままでいるしかない。彼を横目で窺うと、内心あたふたな私とは違って落ち着いて見えた。

(今まで手を繋ぐことなんてなかったのに、今日はなんで……?)

 ただの友達なのだから手を繋がない方が普通で、手を繋いでいる今が異常なのだと思う。確かに今日は休日で人の出も多いけれど、手を繋がないとはぐれてしまうほどの人混みではないのだ。だからわざわざ手を繋ぐ必要はないのに、どうして。

「前から思ってたんだけど、キミって結構わかりやすいよね。考えてることが顔に出やすいっていうか」
「えっ」

 思わず視線を彼に向けると、同じようにこちらに視線を向けていたフェイスくんと目が合った。

「なんとなく気付いてはいたんだけど隠してるみたいだったし、何よりその時はナマエのことをただの友達だと思ってたから、今まで通りにしてた」

 でも、今日はちょっといつもと違うなって思ったんじゃない?
 そう続けられた言葉に、はっとする。今まではなかったのに、今日はあったこと。さっきからどうしてだろうと考えている反面、それが嬉しいと思っている自分もいて。

「今日はデートのつもりだから。ナマエもそのつもりでいてね」

 ぎゅ、と繋がれている手の力が少しだけ強くなったような気がする。鼓動がドクドクとうるさくて、なんだか顔も熱い。
 彼の言葉を信じていいのなら、本当にデートなのだとしたら。私の気持ちを伝えてもいいのだろうか。そうしたら、あなたの気持ちも教えてもらえるかな。



『Words Pallet Select me.』より
22.土曜日には花束を(デートのつもり、横目で窺う、教えて)


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