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最愛ハートビート



 彼の飄々とした雰囲気がそうさせるのか、数多の女の子達と遊んでいた経験があるからなのか。フェイスくんにはいつも余裕があるように見える。それが少し悔しい半面、羨ましくもあった。

「フェイスくんって緊張したり、ドキドキしたりすることってあるの?」
「あんまりないけど……何、急に?」
「あ、やっぱりそうなんだ……」

 気になって聞いてはみたものの、答えは予想していた通りだった。
 わたしは人並みに緊張だってするし、フェイスくんと一緒に居たらドキドキしたりするのに。普段よりも少し速く心臓が脈打っているのも、わたしだけなんだ。そう思うと、ちょっとだけ寂しさを覚えた。

「なんかずるいなぁ。いつも余裕があって羨ましいよ」
「余裕があって羨ましいって言うけど、実際はそうでもないんだよ」

 思わずじっと彼を見つめてしまったけれど、その表情は何一つ変わらない。それなのに案外そうでもないとは、一体どの口が言うのだろうか。

「こう見えて、たった一人だけを好きになったのは初めてだからね」

 こちらを見つめてふっと柔らかく笑った彼に、心臓が大きく跳ねた。頬がじわじわと熱を持ち始めていくのがわかる。
 本人はそうでもないと言っていたけれど、やっぱり余裕があるようにしか見えない。わたしはこんなにも心を乱されているというのに。

「……フェイスくん」
「ん? どうしたの」

 ゆっくりと距離を詰めて、恥ずかしさも照れも全部を押し込めて、彼の唇に自らのそれを押し付けた。
 普段はフェイスくんからキスをしてくれるので、わたしからしてみたら彼の余裕もちょっとは崩せるかなと思い、してみたのだけど。

「……不意打ちはずるくない?」

 ちらりと視線を向けてみれば、頬がほんのりと赤くなっている彼が視界に入ってきた。どうやら照れているらしい。あまり見られない表情を見ることができて嬉しくて、心が弾む。してやったりだ。

「いつもわたしばっかりドキドキさせられているから、フェイスくんのその余裕を崩したいと思って」
「へぇ? じゃあ、もっとしてくれる? ナマエのことしか考えられなくなるくらい」

 そう言った彼はわたしとの距離を詰めながら、とんとんと人差し指で自分の唇を軽く叩いた。己の行動を軽率だった……と後悔しながらもわたしは悟った。これは逃げられないな、と。
 わたしがぎゅっと目を瞑るのと、フェイスくんの唇に自分のそれを塞がれたのは、どちらが先だっただろうか。何度も何度もキスをされて、うるさいくらいに鼓動が速くなっている今となってはもう、そんなことはわからない。ただ与えられる甘やかな快感を味わうことしかできなかった。

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