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未来はきっと幸せ色



 今思えば、レンくんから家族の話はあまり聞いたことがなかった。家族のことを話したがらない人もいるからと、そこまで深く気にしていなかったのだけど。それでも、よく考えていればその可能性に辿り着いていたかもしれないのに。

「……父さん、母さん、姉さん。久しぶり」

 家族に紹介したいんだがいいかと彼に聞かれて、それを了承したのがつい数時間前のこと。家族に紹介したいと思ってもらえたことが、それだけ真剣に愛してくれていることが嬉しくて、その時のわたしは浮かれてしまっていた。レンくんの言う「家族に紹介したい」がどういう意味なのか、ちゃんとわかっていなかったから。
 その言葉の重さを理解したのは、フラワーショップで花束を買った後だった。彼に案内を任せたら迷ってしまう可能性があると思い、住所を聞いてわたしがスマホの地図アプリを見ながら、一緒に向かえばいいだろう。そう考えてレンくんに住所を聞き、それを地図アプリで表示して、愚かなわたしはそこでようやく気が付いた。行き先は彼の実家ではなく、墓地だったのだ。そんなの誰だって、嫌でもわかる。彼の、レンくんの家族は亡くなっているんだということが。

「最近は、あまり顔を見せに来られなくて悪かった。でも、今日は……紹介したい人がいるんだ」

 彼が今も尚感じ続けているであろう苦しみや悲しさは、きっとわたしの想像よりも遥かに大きくて、重たいだろう。思い出すことだって苦しいかもしれないし、話さないという選択肢だってあったはずだ。それなのに、レンくんはわたしに話してくれた。お父さんとお母さん、お姉さんがどんな人だったのか。小さい頃のちょっとした思い出や、そんな大好きな家族を目の前で失った時のことも。

「……初めまして、ミョウジナマエです。レンくんとお付き合いをさせていただいています」

 溢れて頬を伝っていた涙を拭ってから名乗り、お墓に向かってぺこりと頭を下げた。彼が供えた花束の花が、風に吹かれてひらひらと揺れる。

「ふっ、不束者ですが、レンくんのことはわたしが絶対、絶対に幸せにします。絶対、ふたりで幸せになります……!」

 泣いてしまったせいで鼻声だっただろうし、声も震えてしまっていたと思う。それに彼の家族からすれば、初めて見る女にこんなことを言われても信用できないかもしれない。それでも、伝えたかった。レンくんを大切に想っていると、絶対に幸せにしてみせるからと。

「それは俺のセリフだ。ナマエのことは俺が幸せにする」
「ううん、わたしのセリフでもあるよ。レンくんのことはわたしが幸せにするから、わたしのことはレンくんが幸せにしてね」

 そうすればきっと、ふたりで幸せな日々を過ごせるだろう。今までもそうしてきたように、お互いに支えたり支えられたりして、想い合って。これからもずっと、そうしてレンくんと一緒に過ごして生きたい。

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