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幸せ色ティアドロップ



「ジューンブライドかぁ……」

 そう呟いた彼女の視線の先にあるテレビでは、ジューンブライド特集の番組が流れていた。ここで結婚式を挙げたい素敵な教会だとか、お勧めの結婚式プランとか、そういったものを紹介しているらしい。そういう時期とはいえ、今のテレビってそういうことも特集するんだなーとぼんやりと眺める。

「女の子はこういうの好きだよなー」
「まぁね。憧れてる子は多いんじゃないかな」

 かく言うわたしもその一人だったりするんだけどね、となまえが笑う。
 正直、俺は別にジューンブライドじゃなくてもいいと思っている。結婚なんてそれぞれのタイミングがあるわけだし、わざわざ六月に合わせる必要もないだろう。だけど、六月に結婚する花嫁は幸せになれると言われているから、ジューンブライド特集なんてものもあるわけで。

「じゃあさ、なってみる? ジューンブライド」
「え?」
「だって憧れてるんだろ?」
「それは、そうだけど…………急すぎない?」

 準備とか色々あるし、今からだとジューンブライドに間に合わないんじゃないかな。そう言葉を続けたなまえは、再び視線をテレビに戻した。どうやら特集は番組内のコーナーの一つだったらしく、今はもう次のコーナーへと移り変わっていた。

「今年は間に合わないかもだけど、来年とか再来年とかだったら余裕で間に合うじゃん?」
「そうかもしれないけれど……夏樹くん、本気?」
「俺が冗談言ってるように見える?」
「見えない、です」

 膝の上に乗せていたクッションをぎゅっと抱き締めて、それで軽く顔を隠しながらなまえがこちらを向く。綺麗な黒曜石は、何故か不安な色を映していた。

「……本当にいいの、わたしで」
「当たり前だろ。俺が好きなのはなまえ、お前だけなんだから」

 だからさ、俺と幸せになってくれませんか。ずっと、それこそ彼女と付き合い始めて少し経った頃から考えていたことを、言葉を口にする。俺の言葉を聞いたなまえは、嬉しさからなのか泣きそうで。震える声でありがとうと呟いて、クッションに顔を埋めてしまった。

「おーい、泣くの早くない?」
「泣いてないもん」
「えー、声震えてるじゃん」

 泣いてないと意地を張る彼女へ手を伸ばして、その華奢な肩を抱き寄せる。よしよしと頭を撫でてやれば、それはこてん、と俺の肩に預けられた。
 ちゃんと指輪を用意して、きちんとプロポーズしたら。なまえは今も泣いているけれど、それこそさらに泣きそうだなーと思う。でもきっと、そのあとで笑うんだろう。ま、笑ってくれないと困るんだけどね。俺の、俺だけの花嫁さん。

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