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コドモ扱い、オトナ扱い



 家柄のせいもあって、昔から大人に囲まれて育ってきた。同世代のダチなんて志太くらいで、他の奴とはあまり遊んだ記憶もない。それは学校に通うようになってからも同じ。だからというわけでもないが、同級生や後輩はどうもガキっぽく見える。

「わたしからすれば、莇くんも充分子どもだけどね」
「うるせぇ」

 俺よりも年上の彼女は、ふいと顔を逸らした俺を見てくすくすと笑った。この際、同級生や後輩なんかの話はどうでもいい。問題はそこじゃなく、なまえさんが俺をガキ扱いすることだ。
 確かに俺は彼女よりも年下だし、そういう扱いをされるのは仕方がないのかもしれない。それは理解しているつもりだが、納得できるかと言われるとそれはまた別なわけで。

「眉間に皺が寄ってるよ。何か考えごと?」
「っ! ばっ、近ぇ!」
「え、そうかな?」
「普通、もう少し離れるだろ!」

 俺の顔を覗き込んだなまえさんから慌てて距離を取ると、彼女は「そういうところが子どもっぽいんだよ」とソファに座ったまま両足を抱え、またくすりと笑った。年上の余裕、とでも言うのだろうか。
 でも俺だって、からかわられっぱなしは性に合わねぇ。そう思って自ら離れたその距離をほんの少しだけ詰めた。

「なまえさん」
「ん?」
「アンタはよく俺をガキ扱いするけど、アンタだってガキっぽいとこ、あんじゃん」

 まぁそんなところも好きなんだけど、とは言葉に出来なかった。恥ずかしいせいもあったが、彼女がこちらへ身を乗り出して、再び距離が近付いたから。

「だ、だから近ぇよ!」
「ふふ。このくらいで照れてる方がガキ、でしょ?」

 ふっと悪戯っぽく笑ったなまえさんがそのまま距離を詰めてきて、唇と唇が軽く触れ合った。反射的に目を閉じてしまったが、瞼を開けると頬がほんのり赤く染まった彼女と目が合った。

「そ、そういうのは結婚してからだろーが!」
「はーい。ごめんね」

 でも責任は取るから大丈夫だよ、なんて微笑む彼女から視線を逸らして、ソファに座ったまま両足を抱える。両膝に熱い顔を押し付けて、自分の唇にそっと触れた。不意打ちを突かれてキスをされたり、さっきのようにキスされたことが何度かあるせいで、残念ながら初めてではない。
 何度されても慣れないのは、俺がガキのせいなのか。なまえさんに余裕があるのは、彼女がオトナのせいなのか。

「…………いつか」
「うん?」
「せ、責任、取るから」

 例えアンタの方が大人だったとしても、責任を取るのは俺だから。なまえさんはそれまで、せいぜい首でも洗って待っていればいい。

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