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恋になりたい物語



 委員会決めの時に図書委員を選んだのは、単純に読書が好きだから。わざわざ委員会に入らなくてもよかったのかもしれないけれど、昼休みや放課後の時間を図書室で過ごすのも悪くないだろうと思ったのだ。賑やかな校内の中でも静かで、本の匂いがするあの空間が結構好きだったから。
 そして後に、わたしは図書委員になってよかったと心から思うことになる。だって図書委員になっていなかったら青柳先輩と知り合う機会はなかっただろうし、先輩を好きになるきっかけさえ訪れなかったような気がするから。

「あの、先輩。今ちょっといいでしょうか……?」
「ん? どうした?」

 わたしが声をかけると、返却された本を元の棚に戻す手を止めて青柳先輩がこちらを振り返る。作業の途中で声をかけてしまったというのに、嫌な表情一つもせず。

「この本なんですけど、戻す場所がわからなくて……」
「ああ、この本か。確かに、覚えるまでは少しわかりにくいかもしれないな」

 案内しようと歩き出した先輩に続いて、わたしも歩き出す。目的の棚に着くと、このラベルが貼られている本はここの棚に戻すのだと丁寧に教えてくれた。入学したばかりでまだこの学校の図書室に慣れていないわたしからすると、わからないことを聞けば丁寧に教えてくれる青柳先輩の優しさはとても有り難かった。

「ありがとうございました。先輩に迷惑をかけないように、頑張って早く覚えますね」
「みょうじならすぐに覚えられるだろうし、そんなに焦らなくても大丈夫だ。それに、迷惑だなんて思っていない」

 いつも真面目に丁寧に仕事をしてくれるから、むしろこちらが感謝したいくらいだ。そう言葉を続けた先輩がふっと柔らかく微笑む。それを見た瞬間、ドクンと心臓が大きく跳ねるのがわかった。
 青柳先輩のことが好きだ。ふとした時に見せる微笑みも、すらりと高い背も、指が長く綺麗な手も。言い出すとキリがないくらい好きなところがあって、でも委員会でしか関わりのないわたしが知っていることなんてほんの一部でしかなくて。もっと知りたい、近付きたいと願ってしまう。ホワイトグレーの瞳にわたしを映してほしい、もしも先輩に彼女ができるとしたらそれは自分がいいと、そんなことを身勝手にも。

「さて、残りも片付けてしまおう」
「はい」

 今はまだ、言えない。ただ委員会が同じだけの後輩としか思われていないだろうと、自分でもわかっているから。

(……もっと、がんばろう)

 少しでも青柳先輩に意識してもらえるように、いつかそう遠くない日にこの気持ちを伝えられるように。それまではできることをして、先輩が好きだというこの気持ちを重ねていこう。
 頑張るぞという意思の元、ぎゅっと小さく拳を握りしめてから次の本を棚に戻すべく歩き出した。その本は奇しくも少し前に流行った恋愛小説だった。

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