この恋、返品不可につき。
※男主設定
せっかくヘアアレンジも上手くできて、いつもと違うメイクにもチャレンジしたのに。走ったら最高に可愛くできた私が崩れちゃうかもしれないから、なるべく早歩きで彼との待ち合わせ場所へ向かう。約束の時間から十分は過ぎてるし、絶対待たせちゃってるだろうなぁ。
「っ、いた! なまえ!」
見覚えのある姿に名前を呼ぶと、私に気付いたらしい彼がひらりと手を振ってこちらへやって来る。
「ごめん、遅れちゃって」
「そんなに待ってないし、気にしなくていいって。それよりほら、早く行こう」
さり気なく掴まれた手に小さく心臓が跳ねた。私の手をすっぽりと包んでしまう大きな手は、ちょっとだけ汗ばんでいて。彼も緊張してるんだと思わず笑みがこぼれた。
「そういえば今日の絵名、なんかいつもと雰囲気違う気がする」
「あ、たぶん、いつもとメイクが違うからかも」
今日は前に買った服と合うように、普段はやらないメイクに挑戦してみたのだ。上手く出来るか不安だったけれど、ブルーを基調としたメイクは我ながら上手に出来たと思う。ただ、思ってたより時間がかかったせいで遅刻しちゃったんだけど。
「そっか。正直、細かいことはよくわかんねぇけど……よく似合ってる。めちゃくちゃ可愛いよ」
「……っ! そ、そう。ありがと」
細かいことはよくわからないと言いながらも、いつもと違う私の変化に気付いて、褒めてくれて。恥ずかしいから絶対に言ってあげないけれど、そこもなまえの好きなところ、だったりする。
(めちゃくちゃ可愛い、かぁ……)
噛み締めるように彼の言葉を反芻した。やっぱり好きな人に褒められると嬉しいし、頑張ってよかったな。
可愛いって、好きだって、いつまでも思ってもらえるように、いつだって可愛い私でいたい。その為に頑張るから、だからあんたもずっと、私のこと好きでいてよね。そう思いながら、繋がれた手をきゅっと握り返した。
『Words Palette two live together』より
21.何度でもときめいて(噛み締める、好きなところ、いつまでも)