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プロポーズ犯行予告



 ここ最近、どこか彼の様子がおかしい。いや、おかしいというよりは何かを隠しているような、そんな感じなのだけど。
 彼氏の様子がいつもと違う時は、浮気の可能性があるらしいと何かで見たことがある。千秋くんに限ってそれはないと思うのだけど、絶対に違うとも言い切れない。人の気持ちとは変わっていくものだからだ。まぁ、何か悩み事があっていつもと様子が違った、という可能性もあるけれど。

「もし違ったらごめんね。千秋くん、何か悩んでたりとかする?」
「えっ!?」

 わたしがそう言うと、千秋くんはわかりやすく狼狽えた。この反応を見るに、どうやら彼は何かに悩んでいるらしい。やっぱり浮気ではなかったようで、ほっと胸を撫で下ろす。

「いや、悩み事と言えば悩み事なんだが……少し違うとも言うか……」
「力になれるかはわからないけれど、悩んでるなら相談に乗るよ。ほら、話すことで楽になることもあるし」
「う、うーん……」

 こればっかりは相談するわけにも、いやでも……などとぶつぶつ呟いた後、どうしたらいいんだと彼は頭を抱えてしまった。わたしもどうしたらいいのかわからなくて困っているのだけど、さてどうしたものか。話してくれないことには何に悩んでいるのかわからないし、でも話したくないのなら無理に聞きたくはない。

「話したくないならこれ以上は聞かないから、安心して」
「…………やっぱり、少し聞いてもらえるか? たぶん、これ以上隠せる気もしないからな」

 そう言いながら苦笑した千秋くんは、一体わたしに何を隠していたというのだろうか。おそらく、それがきっと彼の様子が変だった理由だとは思うのだけども。

「本当はサプライズにしようと思って、内緒で準備していたんだが。どうしてもわからないことがあって、それで困っていたんだ」
「サプライズ? 準備?」

 何かサプライズで準備をされるようなことがあったかなと記憶を探ってみるものの、特に思い当たらなかった。わたしの誕生日は違うし、付き合い始めた記念日ももう少し先だ。じゃあ彼は何の準備をしていたというのだろう。

「その……プロポーズ、の準備を、だな」
「……プロポーズ」

 驚きながらも納得してしまった。なるほど、それはわたしに心当たりがないわけだ。サプライズしようと準備をしてくれていたのだから、尚更わかるわけがない。まぁ、様子がおかしいなと気付いた時点で、若干わかってしまっているようなものかもしれないけれど。

「え、じゃあ悩んでたのって……?」
「なまえの指輪のサイズがわからないから測ろうと思ったんだが、気付かれないように測るのは難しくてな。それでどうしたものかと悩んでいたんだ」

 心配させてしまってすまない。申し訳なさそうに言葉を続けた彼に、謝らないでと両手を振る。むしろ、謝るのはわたしの方だ。気付かないふりをしていれば、千秋くんが計画してくれていたサプライズは成功したかもしれないのだから。

「おまえが謝る必要だってない。気付かれてしまったのは俺のせいだからな」
「あ、でも、これで堂々とわたしの指のサイズが測れるんじゃない?」
「それは……うん、確かにそうだな」

 じゃあ早速いいだろうかと問われ、大丈夫だと頷く。
 サプライズではなくなってしまったけれど、一つ楽しみはできた。いつか大好きな人がプロポーズしてくれるんだという、一生に一度しかないであろうとっておきの楽しみが。

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