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一番星ディアレスト



 ガチャリとリビングのドアが開いて、帰って来たらしい彼女の姿が視界に入ってくる。今日は友人の結婚式に参加してくると言っていたので、普段着ている私服ではなくドレスを身に纏っていた。深い海のような綺麗な青色のそれは、せっかくだからジュンくんの色のドレスにしたくて、となまえが選んでいた物。言われた時は好きな色を着たらいいのにと思ったが、こうして実際に着ている姿を見ると、心に来るものがある。オレの色がよく似合っているし、綺麗だ。

「ジュンくん、聞いて聞いて! 友達の式ね、すごい素敵だったんだよ! ……あ、なんか思い出して泣きそう……」
「はいはい、話ならいくらでも聞きますから。つうかもしかして、式の最中泣いたんすか?」
「うん、ちょっとだけ。ウェディングドレスを着た友達がすごく綺麗で、すごく幸せそうで。良かったねって思ってたら、なんか昔のこととか思い出しちゃって、それで涙腺がね……」

 滲んだ涙を指で拭いながら、結婚式のことを話すなまえの表情は優しい。それだけその友達さんのことを大切に思っているのだろう。素敵な友情だと思う反面、ほんのちょっとだけ眩しくも思った。

「そういえばね、友達とその彼氏さん……じゃない、結婚したから旦那さんか。とにかくその二人がUNDEADのファンらしくって。式でUNDEADの曲を流してたんだよ」
「へぇ、そうなんすね」

 UNDEADと言えば過激でかっこいい曲が多いイメージだけど、一体どの曲を式で流したんだろうか。でも、大神さんや乙狩さんが聞いたらきっと喜ぶだろうな。今度お会いした時にでも話してみようか。

「わたしが結婚式で流すとしたら、やっぱりEdenの曲かなぁ。あ、Eveの曲もいいかも」
「え、オレらの曲を流すつもりなんすか!?」
「あくまで可能性の話だよ!? 結婚式を挙げる予定なんてないわけだし……!」

 自分の結婚式で自分達の曲を流すのはなんというか、さすがにちょっと恥ずかしい。あとは単純に、結婚式に合いそうな曲がパッとは浮かばなかった。
 オレの職業柄、なまえの友達さんのような結婚式を挙げるのは難しいだろう。そもそも、あの茨から許可が下りる気がしない。でも。

「……結婚、したいっすね。オレ達も」
「えっ」
「え? あっ、いや、今のなし! なしでお願いします!」

 心の中で留めていたはずのそれは、無意識の内にぽろっと零れてしまっていたらしい。慌ててなかったことにしようとしたものの、彼女にはもうばっちり聞かれてしまっていて。

「……こういうのはちゃんとしたいって決めてるんで。だから、その時まで待っててください」

 オレはあんたと幸せになりたいから。これから先の人生も、誰かと一緒に歩むならあんたがいい。なまえしか、考えられないんだ。
 いつかこの手を差し出した時、なまえはオレの手を取ってくれるだろうか。なんて、今更手放してやる気はないんで、せいぜい覚悟しておいてくださいねぇ。

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