あんスタ | ナノ
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君と、僕と、それから愛と。



 ピンポーンとインターホンを押すと、この部屋の主は思っていたよりも早くドアを開けてくれた。こうしてなまえちゃんの元を訪ねるのは、ちょっと久しぶりで。会えることが嬉しいのか、らしくもなくふわふわと心が浮ついていた。

「よォ、なまえちゃん。久しぶりだなァ」
「いらっしゃい。久しぶりだね、燐音くん」

 ドアの鍵を施錠してから靴を脱ぎ、フローリングの床に足をつける。別に何年も時間が空いていたわけではないから、彼女の住む部屋は前に来た時とそう変わりない。ただ、なまえちゃん自身には変化があったようだ。

「なまえちゃん、痩せたか?」
「あー……うん」

 俺っちの指摘に苦笑いした彼女は、夏バテで食欲ないからあんまり食べられなくて、結構体重落ちたんだよねと、言葉を続けた。

「なるほどなァ。道理でなまえちゃんのない胸がさらにねェわけだ」
「……燐音くん最低」
「ってのは冗談で。……ホントに大丈夫かよ? 顔色悪ィぞ」

 メイクで誤魔化しているようだが、それでもよくよく見ればわかる。顔色が悪いことだけじゃなく、肌の調子も良くねェんだろうなってことも。

「まだ倒れてないし、だいじょ……っ」
「おっと! ……ほーら言わんこっちゃねェ」

 ふら、と傾いたなまえちゃんの体を咄嗟に支える。久しぶりに触れた彼女の体は、体重が落ちたと言っていただけあって軽い。腕も足も腰も、以前と比べて少し細くなっていた。

「ご、ごめん。ありがとう」
「ったく、仕方ねェな。そのまま大人しくしてろよ、っと」

 彼女の体を支えていた腕を膝裏と背中に回して、そのままふわりと華奢な体を抱き上げる。所謂お姫様抱っこというやつだ。

「ちょ、ちょっと燐音くん!?」
「あー、はいはい。だから大人しくしてような〜」
「自分で歩けるから下ろして……!」
「さっきふらいてたのはどこの誰だったかねェ。なァ、なまえちゃん?」

 俺っちがそう言うとぐうの音も出ないのか、彼女は黙って大人しくされるがまま。最初から素直に抱っこされてりゃ良かったのに、なまえちゃんも困った子だ。抵抗した理由はおそらく、お姫様抱っこは恥ずかしいとか重くないか心配だとか、そんなところだろうが。

「……重くない?」
「全然。むしろ、羽みてェに軽いけど?」
「いや、さすがにそんな軽いわけないでしょ」
「まァそれはさすがに冗談だけどよ、前よりも軽くなったと思うぜ」

 毎年信じられねェくらい暑くなる夏もどうかと思うが、もはや恒例行事と言わんばかりに毎回律儀に夏バテになっている彼女もまた、俺っちとしてはどうかと思う。ちょっとくらいは健康でいて欲しいモンだ。

(夏バテとは死んでも縁がなさそうなニキに聞いてもあんま意味はなさそうだが、食欲がねェ時でも食べられる何かでも、今度聞いておくか)

 アイツに聞いたら聞いたで何か失礼なことを言われる気がするが、仕方ない。なまえちゃんは俺っちが愛している、たった一人の女だから。これからもあんたが隣に居てくれんなら、多少なりともらしくねェことだってしてやる。だから、あんまり心配させないでくれ。ちょっとでも力を入れたら壊れちまいそうな体を抱えながら、そう思った。

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