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癒しの一杯をあなたに



 ティーポットからカップにお茶が注がれると、ふわりといい香りがあたりに広がった。どうぞと差し出されたカップを受け取って、それに口をつける。巽くんが私のためにと淹れてくれたハーブティーは温かくて、ほっとできる優しい味がした。心にじんわりと染みて、疲れが少しずつ解けていくような。

「……おいしい」
「なまえさんの口に合ったようでよかったです」

 微笑んだ彼もソファに腰を下ろすと、カップを手に取って自らブレンドしたというハーブティーを味わい始めた。どうやら上手くブレンドできたらしく、満足そうに頷いている。
 私は彼ほどハーブに詳しくはないけれど、巽くんの影響で紅茶やハーブティーなどを飲む機会は増えたと思う。だけど彼がハーブティーを勧めてくれるのは、いつも決まって私の元気がなかったり、落ち込んでいる時だった。今もそう。

「リラックス効果のあるハーブをブレンドしているので、少しでもなまえさんの疲れが癒えるといいのですが……」

 さっきの満足そうな表情はどこへ行ったのか、今は心配の色を滲ませて私を見つめている。そんな顔をさせたいわけじゃないのに。

「ありがとう。すごく癒されたよ」

 心配してくれる彼に、もう大丈夫だと安心してほしくて笑って見せる。だけど巽くんの表情は曇る一方だった。……笑顔、ぎこちなかったかな。癒されたのは本当なのだけど。

「……巽くんって、ハーブティーみたいだよね」
「え? 俺が、ですか?」

 ぱちくりと瞬きをする彼を見るに、どうやら話を逸らすことは成功したらしい。ひとまずよかったと思いながら再び口を開く。

「なんとなくそう思っただけなんだけど。爽やかなところとか、癒されるところとか、ちょっと似てるかな〜って」
「自分ではよくわかりませんが……なまえさんが言うのなら、そうなのかもしれませんな」

 でも、話は逸らせていませんよ。そう言葉を続けた巽くんは、テーブルの上にカップを置くとこちらに向き直った。

「やっぱりダメだったかぁ」
「ふふ、はい。というわけで、なまえさん」

 おいで、と言わんばかりに広げられた両腕。手に持っていたティーカップをテーブルへ避難させてから、私は彼の腕の中へと収まった。さっきハーブティーを淹れてくれたからだろうか、巽くんからも仄かにハーブの香りがする。心が癒されて、すっかり安心するようになった、彼の匂い。

「俺は、こうしてなまえさんが傍に居てくださるだけで幸せです。今日も生きて、俺の傍に居てくださって、ありがとうございます」

 そう言いながら私の頭を撫でてくれる彼の手は、とても優しくて。また明日から頑張らなくちゃと思うのと同時に、落ち込んだり元気がないといつもこうして甘やかしてくれるので、そろそろダメになりそうで怖いな……とも思う。あんまり甘やかされるとでろでろになって、砂糖漬けにでもなってしまいそうだ。でも今は、もう少しだけその甘さに浸っていたい。

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