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トキメキドライブ


※車の免許持ちで運転できる設定



 少し前にたまたま立ち寄った本屋さんで、ふと目に入り気になってしまったグルメガイド雑誌のコーナー。その中でもスイーツ特集という文字に惹かれて、つい一冊買ってしまった。それをリビングでぺらぺらと眺めていたのが、つい数時間ほど前のこと。今はというと、晃牙くんの運転する車に乗せてもらっている。しかも助手席という特等席に。

「思ってたより道が空いてんな。予定より早く着けんじゃね〜か?」
「ほんとに!? やった!」

 思わずぐっとガッツポーズをすると、隣から「ガキみて〜な反応だな」と笑い声が聞こえた。むっと思いながらそちらに視線を向けると、顔は正面を向いているのに優しく笑っている晃牙くんが視界に入ってきて。そんな顔で笑わないでほしい。ただでさえ、車を運転しているだけでかっこいいんだから。きゅっと胸があまく締め付けられて、その苦しさに彼から視線を外す。そしてそれを誤魔化すように「そ、そういえばね」と口を開いた。

「今から行くお店、サンドイッチも美味しいって評判なんだって。運転してもらってるし、お礼に買ってくるよ」
「別に気にすんな。運転も俺様が言い出したことだしよう」

 けどまぁ、腹減ったからサンドイッチは買ってきてくれ。そう言葉を続けた彼に、了解ですと笑顔で頷く。サンドイッチはわたしも気になっていたし、晃牙くんから一口もらおうかなぁ。雑誌に載っていた一番のオススメだというたまごサンドにしようか、それともお店のサイトに載っていた照り焼きチキンサンドにするか。どっちも美味しそうだったので迷うけれど、晃牙くんに買うならやっぱり肉だろうか。となるとカツサンドとかにするべきかな。なんて考えているうちに、どうやら目的地であるお店に着いたらしい。

「お、ここだな」

 カチカチとウィンカーの音が車内に響いて、吸い込まれるようにして車が駐車場へと入っていく。慣れた手つきでハンドルを操作していた彼の左腕が、何の前触れもなく助手席のシートに回されて。そこに重心を置いて、身を捩るようにして後ろを確認しながら車をバックさせていく。そのせいで、晃牙くんとの距離はさっきよりも近い。落ち着いてきていたはずの心臓が、またばくばくと暴れ出す。はやく、はやく終わって。そんなわたしの願いが届いたのか、彼はすんなりと車を駐車させた。
 さっきから思っていたのだけど、晃牙くんの運転はとても丁寧で上手だ。彼の見た目だとちょっとくらい運転が荒そうなものなのに。なんて言ったら怒られる気がするので、絶対言わないけれど。

「おらなまえ、着いたぞ」
「えっ、あ、うん。ありがとう……」
「あん? おまえなんか顔赤くね〜か? 熱でもあんじゃねぇの?」

 さっきまで助手席に回されていた腕が、今度はすっとこちらへ伸びてくる。心配そうに覗き込む顔も、今のわたしにとっては体温上昇の原因でしかなくて。

「だ、大丈夫! お店行ってきます! すぐ買ってくるから!」

 慌ててシートベルトを外して、逃げるように車を飛び出した。顔の熱を冷ますように、お店までは小走りで向かう。店内に入るまでに少しでもこの熱が落ち着きますように、と願いながら。

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