2
ラゴウの体は橋から落ち、川に飲み込まれ消えていった。
「マリア、いるんだろ。出てこいよ」
「…気づいていたんですか」
「ああ。マリアがしようとしてたこともな」
私はユーリには派遣騎士をしているだけしか言っていない。
罪人を自ら裁くことなんて言っていないはずなのに…。
「解るさ。ラゴウを見ながら手を剣から離さなかったのを見てりゃあ、何をしようとしてるか」
「…ユーリ」
「解ってたんだろ。ラゴウが権力を使い刑を軽くすんの」
「ユーリは、私の代わりにラゴウを斬ったのですか?」
ユーリはラゴウを斬った剣と手を見ながら違うと答えた。
「…まさか。オレはあいつが許せなかったから斬った。ただそれだけだ」
「罪人に自らなるんですか」
「覚悟は出来てる」
ユーリは昔から変わっていない。
自らが手を汚しても護りたい者のために剣を振るう。
ランバートやガリスタの時も、その手で…。
「そうですか。…なら、私も覚悟を決めました」
「何の…」
「あなたとその罪を背負う覚悟、です。私にも背負わせて下さい。あなたの罪を」
それが、口にはしないけど私のために手を染めた、あなたに出来ること。
「マリア」
「あなたに一人で背負わせません。…駄目ですか?」
「駄目っても、聞かねぇんだろ」
「はい。では、これから共犯ですね。…ラピードとショコラも一緒に」
橋が見える場所にはラピードとショコラがこちらを見ていた。
「ラピード…」
ユーリはラピード達がいたことに気付かなかったのか、驚いていたが何も言わないのは信頼しているからなんだろう。
いいパートナーになったみたいですね、ラピードとユーリは。
それから闇が開ける前に私達は別れた。
私達は離れていても心は一つ。
そう互いに解っているから。
[ 59/91 ][*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]