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「なぜここにレイヴンが…?」
「天を射る矢の俺様がダングレストいちゃ可笑しいのかしら?マリアちゃん」
「なんだ?おっさんと知り合いなのか」
「はい。…そうなりますね」
彼はレイヴンであると同時に騎士のシュヴァーンというのは私だけが知っていることだ。
彼は父と知り合いで、アレクセイの人体実験にされたことを知っている。
死に場を求める彼を説得し、こっそりとアレクセイの情報をくれたりとしている。
「ふーん。んで、マリアはなんでここに?」
「任務で紅の絆傭兵団に乗り込む途中ですよ。それでこれを見つけて」
私は目の前の壁面を見つめた。
それに合わせてユーリ達もようやくその存在に気づいたのか、壁面を見つめる。
「ん、なんかここに刻んであるな。…文字か。なんだ?」
「これにはこう書いてあります。…かつて我らの父祖は民を護る勤めを忘れし国を捨て、自ら真の自由の護り手となった。これ即ちギルドの起こりである。しかし今や圧制者の鉄の鎖は再び我らの首に届くに至った。我らが父祖の誓いを忘れ、利を巡り互いの争いに明け暮れたからである。ゆえな我らは今一度ギルドの本義に立ち戻り持てる力をひとつにせん。我らの剣は自由のため。我らの盾は友のため。我らの命は皆のため。ここに古き誓いを新たにす」
長い文章を読み終え、カロルがこれがユニオン誓約だと気づく。
ユニオン誓約とは、ドンがユニオンを結成した時に作られた標語のようなもの。
昔に騎士団に街を占領された際に、バラバラだったギルドを纏めるために誓った誓約。
そこには世で悪党とされたアイフリードの名もあり、昔の神聖なる誓いを目の当たりにした。
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