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カプワ・ノール港からやっと定期便を出すことが出来たので、トリム港へと移動して目指すは地震で崩れたと言われるカルボクラム。
他の派遣騎士の情報で、カルボクラムで大々的な実験が行われた形跡があると教えてもらったからだ。
カルボクラムにつくと、私は手当たり次第に家の棚を見て回った。
大体こんな場所に書類などを残す筈がないのはわかっていても、些細なことでも見逃さないために瞳を凝らす。
「ワンワン」
「…地面に術式がかかれて…?擦れていて良くわかりませんね」
土埃を退かすも、全体を把握することは出来ないけど、これは手がかりだとメモに書けるだけ写す。
*
暫く見て回ってから、外へ出ると大きな地響きがしてその場に倒れる。
「地震?…いえ、これは…」
収まってから二人の人物が此方に来るのがわかった。
「マリア、ここにいたのね。はい!この前頼まれてたもの」
「こんな所まで大変だね」
「ヒスカ、シャスティル。ありがとうございます」
双子のヒスカとシャスティルとは、あれからも交流があってたまに私の仕事を手伝ってくれている。
「そこで朗報!アレクセイ閣下は今ヘリオードにいるみたい。なんでもヨーデル様をお迎えに来たんだって」
「ヘリオードと言ったら、また変な噂がある場所ですね。平民が貴族になれるという…」
「あり得ないよねー。しかもあそこの執政官代行が、あのキュモールって話だからね」
キュモール…、まさかここでその名前が出てくるとは、…あまり会いたくない人ですね。
「ヘリオードは後回しです。私はすぐにダングレストへと向かわなければ」
「え、なんでダングレスト?」
「ラゴウはギルドの紅の傭兵団と繋がっているからです。ラゴウの屋敷で密書があって」
「なるほど。じゃあ、また何か合ったら連絡するよ」
「はい。ありがとうございます。それでは」
ヒスカとシャスティルと別れ、私はヘリオードを素通りしてダングレストを目指した。
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