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一夜明けたシゾンタニアは沈んでいた。
街を守り亡くなったナイレン隊長の死を皆が悲しんでいる証拠だ。
着実に葬儀の準備が整いつつある中、私はまだ部屋にいた。
私だけが沈んでいるなんていけないと解ってる。
…でも、心は理解してても体が追い付いてはくれなくて。
コンコン
「…誰、ですか?」
「オレだけど…」
「ユーリ…?」
私の部屋にユーリが来るなんて初めてのことだから、驚いた。
「帝都から迎えが来た。…隊長の葬儀始まるぜ」
「…はい、わかりました…」
そう言っても体は椅子に座ったまま動かない。
「…っ、マリア!ちゃんとしろよ!いつものあんたはどこに行ったんだ!!」
「…いつもの、私?」
ユーリは私の肩を掴んで顔を向き合わせる。
「いつも誰にも優しくて笑顔を絶やさなかったあんただよ!そんな脱け殻みたいなマリアを見て、隊長が喜ぶのかよ!」
「…隊長が…」
隊長なら『だらしねぇな。もっとしっかりしろや』と言いそう。
「なぁ、元気だせよ。マリアがそんなんじゃこっちが調子狂っちまう」
ギュッとユーリが私を抱き締める。
…温かい。
「隊長はもういない。なら、オレがあんたの傍に居てやる。隊長の変わりに傍にずっと居てやるから…」
だから、いつもの私に戻って欲しいとユーリは言う。
ねぇ、隊長。
約束を守れない隊長なんて大嫌いです。
でも、同時に…大好きでした。
そんな隊長と同じことをユーリが言ってくれています。
私は、どうしたらいいでしょうか…。
『マリアはマリアの信じる道を行け』
…そう言うのでしょうね、あなたなら。
「ありがとう、ございます。…ユーリ…」
私はユーリの背中に手を回した。
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