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籠手でなんとかランバートの牙から逃れることは出来たけど、これがいつまで持つか分からない。
「うぁ…!!」
「マリア!!」
「ランバート!止めて!ランバート!!」
すぐにエルヴィンとユルギスが助けに入ってくれたけど、こちらはやられる一方。
どうしても本気でランバート達を斬ることが出来ないのだ。
「ランバーーート!!」
その時、ユーリの声が森に響き渡った。
ユーリは剣を構えると、触手に取り込まれたランバート達に向かい駆ける。
ランバートもユーリに向かい襲い掛かる。
…それはまさに一瞬だった。
ユーリは皆の為に、ランバート達を斬ったのだ。
斬りかかる瞬間、歪んだ顔を私は忘れないだろう。
“ランバート…ごめん…”
ユーリの心の声が聞こえた気がした。
*
後始末を終えた時にはもう夜になっていて、皆は気丈に振る舞ってはいたが被害のでかさに皆沈んでいた。
「…ユーリは?」
「ユーリなら一足先に戻ったはずだ。マリアももう休め、疲れただろ」
「…ごめんなさい。お言葉に甘えさせていただきます」
私は重たい足を引きずり宿舎に向かう。
その途中、雨が降りだし体を濡らす。
ユーリはどうしているだろう。
私達の変わりにランバート達を手にかけたユーリは、ひどく悲しんでいるのだろうか。
まるでこの雨は泣くことが出来ないユーリの為に、空が流した涙みたいだと私は思った。
「クーン」
「ショコラ…、私は、誰も助けることが出来ないのでしょうか…」
仲間を助けられない私に、父の意思を継いで世界の人を助けることが出来るのだろうか。
この時、初めて決心が揺らいだ。
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[mokuji]
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