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十年前の人魔戦争では私の父親も出ていて、生存者が少ない戦いで帰ってきた数少ない一人だった。
けど、余程酷い戦いだったのだろう。
酷い怪我をし、後遺症が出てしまったせいで騎士団にいることが出来なくなってしまった。
それがショックだったのか、父は部屋に引きこもり続けた。
そんな父が、2年たったある日に部屋から出てきたと思ったら、母を連れて旅行に出ると言い出したのには驚いた。
私も行きたいと言えば、お前は駄目だと怒られ留守番をすることに。
今思えばおかしなことだ。
出かける時、両親はまるで別れを惜しむかのように私を強く抱き締めてから出ていった。
…そして、帰っては来なかった。
暫く塞ぎ込んでいた私は、赴任してきたナイレン隊長に励まされ正気を取り戻し、ある日両親の遺品を整理しようとした。
すると、一冊のノートが出てきたのである。
それの内容は、人魔戦争での出来事が鮮明に書かれていた。
人魔戦争の本当の意味、数々の惨状、騎士団長の不審な行動の数々。
その時、父は騎士団長が何かを企んでいると考えたのだろう、沢山の報告書なども書いてある。
そんな中、私は父の手紙を見つけた。
『最愛なる娘マリアへ。
この手紙を読んでいるということは、私は死んでしまっているのだろう。
そのノートは私が集めた真実が書かれている。
私が死んだかわりにお前に託したい。
…お前にこんなことを頼むことは酷く悩んだが、アレクセイのしようとしていることを見過ごす訳にはいかないのだ。
彼は必ず近い未来に恐ろしい計画を実行に移すだろう。
私はこの世界が好きだ。
そこに生きている全ての人が幸せになることを望んでいる。
だからこそ、それに仇なす奴を放っては置けない。
マリア、もしこれに賛同してくれるなら私の意思を継いでくれ。
強制はしない。
私はお前の幸せを願っているのだから。
愛しているよ、マリア、私達の可愛い娘。
花嫁姿が見れないのが残念だ』
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