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いつも髪を降ろしているからあまり見られることがない耳。

そこには、赤いピアスがあります。

その日、ユーリと買い物に出掛けていた時に風が吹いて、髪を払われたのでユーリに見えたみたい。

「へえ。マリアはあまり装飾品を付けねえのに、ピアスはしてんだな」

「あ、はい。これは、母の形見なんです」

ピアスを擦りながら答える。

「片方だけが?」

左右ついてないことに気づいたユーリが尋ねてくる。

不思議に思うのは無理ありませんね。

「いいえ。もう一つありますけど、私が付けていいのは一つだけなんです」

「ピアスってそんなもんなのか?」

「これは特別なんです。このピアスを大切な人と一つずつ所有していると、どんなに遠く離れていても必ず二人は巡り会うという言い伝えがあるんです。父と母もそうだったようで、いつも聞かされてました」

おまえもいつか大切な人が出来たら、渡しなさい。と言われて譲り受けたピアス。

まだ大切な人がいないからもう片方はずっと大事にしまわれたまま。

いつか、渡せるのいいのだけど…。

「ふーん。見つかるといいな」

「ええ。そうですね」

私の心から大切な、愛しいたった一人の相手。



それはすぐ傍にいることを、この時の私は知らなかった。



 



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