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「あたしもここ知ってる。あのエアル暴走に巻き込まれた街よね。あの魔核をくれた騎士の隊長がいた…」
「そう。私の今日の目的はその隊長のお墓参り。ユーリに頼んでお供え物を選んで貰ったの」
ユーリに付き合って貰った買い物はナイレン隊長に備える物だったのだ。
買った物は、隊長が好きそうなお酒にキセル。
「あれ?でも隊長だとするとお墓は帝都にあるのでは?どうしてシゾンタニアに…」
「彼の魂はここにある気がするんです。隊長があんなお墓でじっとしている訳がありませんから」
「確かに」
マリアの言い分に隊長を知るユーリが頷く。
「だからここに…」
結界魔導器があった塔の前に花束と共にお酒とキセルを置く。
それから手を合わせた。
隊長…向こうで奥さんと娘さんに会えましたか?
きっと隊長は相変わらずなんでしょうね。
私は大丈夫です。だから心配しないで下さい。
私は一人じゃないと知りました。
隣に並んで同じものを見てくれる人を見つけました。
ユーリと歩むことを選びました。
安心してお眠り下さい。
「…なんだ?」
マリアが見ていたことに気付いたユーリは首を傾げた。
「いいえ。なんでもありません」
「そうか」
マリアとユーリの手は自然に繋がれた。
その直後シゾンタニアの街に風が吹き、マリアの髪が揺れる。
乱暴で、でも優しい風の感覚にナイレン隊長のような風だとマリアは思った。
「…また来ます」
その言葉を最後に、マリア達はシゾンタニアを後にした。
end
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