遠征は無事に終わり、グランコクマに帰る道中にふと嫌な予感が過る。

しかしそれがなんなのか分からず、その時は気にも止めなかった。

グランコクマに着いたのは朝方で、私はすぐに陛下に無事に終わったことを告げる。

「そうか、ご苦労だったな」

「まったくです」

「…可愛くない奴だな本当に。そうだ、ジェイドはまだルーシーに会ってないのか」

「ええ、すぐに報告するためにここにきましたから。ですからもう帰ってもいいですか?陛下」

「ああ、はやく帰ってやれ。寂しがってたからな」

陛下からルーシーが寂しがってたと聞いて、私はすぐに足を屋敷に向かわせる。

この私が、まさかここまで彼女に執着しているとは思わなかった。

はやく安心させたい。

はやる気持ちで屋敷についてドアに手をかけた瞬間、再び嫌な予感がした。

そしてそれはすぐに予感から現実へと変わる。

ガチャ

「(鍵が開いている?)ルーシー、ただいま帰りましたよ」

屋敷に入り声をかけるが、ルーシーが来る気配も声もしない。

いや、屋敷にルーシーの気配すらない。

「…っ、ルーシー!!」

一瞬にして頭の中で最近起こっている連続失踪事件が過る。

リビングにつくと、倒れた車椅子と私の部下が頭から血を流して倒れていた。

「これは…、しっかりしなさい。なにがあった」

「…、ジェイド…大佐…?遠征から、お帰りに…」

抱き起こした部下は、目を覚ました。

「それよりルーシーは何処です。あなたは護衛として一緒にいた筈でしょう」

「あ…、そうです!ジェイド大佐!ルーシーさんが、突然現れた男達にさらわれて…!」

夜中に突然現れたという集団に襲われ、力及ばず連れていかれたという部下。

とりあえず私は彼女を抱えて軍の医務室に連れていき、陛下に報告を向かう。

陛下の部屋につくと、私はすぐにルーシーが拐われたと伝えた。

「なに!?ルーシーが!?」

「ええ、一緒にいた護衛の部下が男達に連れていかれたのを目撃しています」

「そうか。…だが、妙だな。今までは証拠の残さなかった奴等が、仮にも目撃者をそのままにしておくか?」

「そのことなんですが」

私は部下の発言に違和感というより疑問があった。

玄関は鍵が開いていたが、こじ開けられた形跡はなかった。

それはつまりルーシーが自ら犯人を招き入れたということ。

争いの形跡もなかったことから、油断して連れていかれた。

護衛の人間がいたからと知らない人間を招き入れるほど、ルーシーは愚かではないことから、顔見知りの犯行だとすぐにわかる。

それもかなり信頼していた相手の…。

同様に、今まで行方不明になった人達も抵抗した形跡がないことから導きだされる答えは、

「あの部下が怪しいでしょう。軍人なら怪しまれず信頼され、油断した隙をつけます。特にルーシーには護衛としてついていたので、疑われることはない」

「軍に共犯者がいたということか。で、そいつはどうした」

「医務室に怪我を治療するという口実で閉じ込めてあります。すぐに口を割らせるつもりなので、陛下は将軍を集めておいて下さい」

「わかった。直ちに取り掛かろう」

そして私は例の部下の元へ、陛下は将軍達を収集するために行動した。

待っていて下さい、ルーシー。

すぐに迎えに行きます。


 

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