第二話:親友は皇帝陛下
晴れてジェイドさんの婚約した次の日、私はジェイドさんの屋敷へと向かった。
もちろん歩けないから車椅子に乗り、迎えに来てくれたジェイドさんに押されながら。
「本当に私が屋敷に住んでいいんですか?邪魔じゃありませんか?」
「いずれ結婚するのだから今でも変わりませんよ。むしろ今から慣れておいた方がいいでしょう。それになんですか?ルーシーは私と結婚する気がないと?」
「そ、そんなことありません!私はジェイドさんと一緒にいたいです…!…あ///」
ジェイドさんに会ってすぐに一目惚れした私としては、一緒にいたいし、結婚するつもりだったから即答すると…私を見ていたジェイドさんが良い笑顔をしているのが見えた。
「それは良かった♪ルーシーの気持ちが知れて私は嬉しいですよ」
「あぅ…、ジェイドさんって意地悪なんですね」
「さてなんのことでしょう」
私がジェイドさんの新たな一面を発見してすぐに見えてきたのは青を基調とした屋敷。
ここがジェイドさんの屋敷であり、これから私が暮らす場所だ。
「広いですね」
「確かに一人では広いと思いますが、ルーシーがいれば丁度よくなりますよ」
「…はい!」
ジェイドさんは外出用の車椅子から私を抱き上げ、室内用の車椅子に乗せてくれる。
それから各部屋を案内してもらう中、屋敷内が段差のないバリアフリーの造りになっていることに気がついた。
「ああ、それはあるお節介する人がしたんですよ。元々するつもりでしたが、手間が省けました。彼もたまには良いことをしますよ」
「それはつまりお友達の方ですか?では、挨拶をしないと!」
いつか会わせて下さいね、と言った時に玄関からジェイドさんを呼ぶ声が聞こえてきた。
「ジェイドー!!」
「はぁ、あの人は…」
ジェイドさんは額に手を当てて盛大に溜め息をついた。
そうしている間に訪問者は、今私達がいる居間へと姿を表した。
「今婚約者が来てんだろ?おまえ、ずっっと見合いを断り続けてのにどういう風の吹き回しだよ!そこんとこよく聞かせ…」
訪問者は私を見て目を見開いた。
まるであり得ないモノを見たような顔をしてから、すぐに頭を振り息を吐く。
「こりゃあ、驚いた。おい、ジェイド」
「安心して下さい。陛下が考えているような事、私は考えていませんよ。私は彼女だから一緒にいたいだけです」
「…なるほどな。ま、キッカケがどうであれ、めでたいことだ」
「あの…?」
全然私に理解出来ない話をしている二人に、疎外感を感じてしまう。
小さく話し掛けると、ジェイドさんはすみませんと言って相手の人を紹介してくれた。
「彼はこのマルクト帝国皇帝ピオニー九世陛下です。因みにこの屋敷の改造をしたり、ここにあるルーシー用の家具や服をくれた人ですよ」
「え…、ピオニー陛下ですか!?でも、今陛下は宮殿にいらっしゃるんじゃ…」
「まったくそうなんですがねぇ、この人はいつもことあるごとに抜け出しては遊ぶ陛下なんです」
呆れながらそう言うジェイドさんに対して陛下は息抜きが必要だと主張した。
皇帝と懐刀という関係には全然見えなくて、聞いてみると二人は幼馴染みなんだという。
羨ましいな、と思った。
それからすぐに兵士が現れて、陛下は連れていかれた。
「…嵐のような人でした」
「いつものことです」
これからの生活が賑やかになる予感がした。
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