こないだ友達と「正直男と会うときより久しぶりに会う女友達と遊ぶときのほうがお洒落するよね」って話したこと思い出しながら、じゃあ今日めっちゃ気合入れてきた私は一馬のこと男って見てないのかなって思った。待ち合わせの十五分前、学校から直できた私は時間を持て余していた。だからこんなこと考え始めたのだけれど。几帳面な部類である一馬が待ち合わせに遅れるはずはないので、遅くても時間ぴったりには来るはずなので、ぼんやりと改札の前に立って流れていく人の波を見ていた。

「わりぃ、待たせたか?」
「ううん、さっき来たとこ」
「久しぶりだな、なまえ」
「一馬日焼けしたね」
「そりゃ外で走り回ってるからな」

 高校卒業してすぐプロの道に行った一馬と大学を受験した私は、仲はいいのだけど特に連絡取り合うほどには仲良くはないしそのままさよならかと思ったんだけど、意外と進学先が一馬の現住所と近くて月イチくらいのペースであっていたりするのだった。一馬とは中高同じ学校で、六年間のうち殆どが同じクラスで、何がきっかけだったか覚えてないけど結構仲良かった。でも一度も付き合ったことはなかった。それなのに卒業後もこうやってあっているから不思議な気分になる。幼馴染の親友みたい。

「あ、そー、今日行くお店七時から予約だから」
「この時間で間に合うのか?」
「駅から近いから余裕余裕」

 この年になると小学生以下の記憶なんてほとんどないから中学校からの付き合いを幼馴染と呼んでもいいだろう。なんて結論づける。グダグダ話しながら歩いていくと、駅から徒歩数分のところに予約したお店があって「へー結構いい雰囲気」なんていう一馬に自慢げな笑みを返した。

「何頼む?」
「とりあえず生」
「飲めないくせに……」
「だから訓練してるんだよ!」
「割と甘いものの方が好きたもんね、一馬」
「……そういうお前は何頼むんだ」
「カシオレ」

 現役の運動選手ということもあって基本一馬はお酒を飲まない。大学生くらいの男子が飲酒してるのは割とよくあることだけれど一馬は違った。でも成人してからもあんまり飲まない。昔から炭酸よりりんごジュースが好きなこともあったせいか、女の子みたいにカクテルの方が好きみたいだ。それを馬鹿にされて躍起になっているところが微笑ましい。
 あれこれ頼んで軽くつまんで、乾杯をしたら私たちの時間。会ってなかったときを埋めるかのように話すこと話すこと。顔のいい若手の選手はアイドルみたいな扱いになるから彼は公開型のSNSをやっていない。親友二人がやっているからやろうかと考えたみたいなのだけど「お前は絶対やらかすからやめとけ」と言われたらしい。私もそう思う。ちょくちょく個人的にやりとりはしているんだけど、離れていたらそれだけじゃ足りないじゃん?

「そう言えば前に言ってた彼女は?」
「別れた」
「はやくない? 何ヶ月?」
「うっせなまえだって今彼氏いないくせに」
「私は続き出したら長いもーん。一馬ほんっと女運ないよね」

 いい感じにお酒が回ってきたら話すのはもちろん恋愛の話。私と一馬は付き合っていない。近いような遠いようなそんな感じの距離。お互いに恋人がいても私たちはこうやって集まって話して飲む。お酒が飲めない年はご飯だけだったけど。同性の友達のような気安さもあって、家族のようにだらしないとこ見せていて、でも異性だから取り繕いたい部分もある。よく結婚する相手と恋愛する相手は違うって言うじゃん。旦那は実用性、彼氏はアクセサリー。私たちまだギリギリ青春できるお年頃だから、キラキラのアクセサリーで着飾っていたいの。

「だけど、最終的に結婚するやつがまともならそれでいいだろ」

 ちらっと。探るように、一馬が私を見た。その視線の意味を理解できないほど私は鈍くない。ああ、あと何年私たちの青春は続くのかな。きっともう、長くはないよね。