一人、二人、いや三人。私の声に応えてくれたのは三人の刀たち。金色の髪のちょっと不良そうな男の子と、黒髪の色白の子と、浅葱色の羽織を羽織った男性だった。ぱっと見た感じみんな性格良さそうでよかった……。

「あ、あの、私」
「俺の名前は獅子王! かっこいいだろ?」
「俺は和泉守兼定。土方歳三が使ってたってことで有名なんだぜ?」
「よお、大将。俺っちは薬研藤四郎。仲良くやろうや」
「あ、はい。よろしくお願いします」

 よ、予想外にフレンドリーだった……。刀のみんなは扱いにくいものだと思ってたんだけど、最初のふたりがあれって私相当運が悪かったのかな。

「あれぇ? 前のじいさんはどうした」
「おじいちゃんは入院したので、代わりに私が審神者を務めることになったんです」
「えっ? じっちゃん大丈夫なのか?」
「心配ありがとうございます。命に別条はないです」
「こんな若いのに大変だな。困ったことがあれば気軽に相談してくれよ」
「ありがとう……」

 気遣いが身にしみる。やっぱり彼らはあの鏡の祭壇がある部屋を根城にしていたらしくて、今誰がいるんだ?と呟きながらほかの人を探しにいってしまった。小夜くんと山姥切さんまだいるかなあ、と心配したけれど、絶賛きのこを増殖中だった。

「……暗いな」
「だな」
「私一人じゃ手に負えなくて、それで手伝ってくれる人がいたらいいなって思ったら皆さんが出てきてくれたんです」
「まぁ、就任してきたばっかのやつにはちとキツいか、こいつらは」

 獅子王さんが小夜くんを拾い上げ、兼定さんが山姥切くんの相手をしている。おじいちゃんの時に結構長い間一緒に過ごしてきたのか、とっても仲が良さそうだった。それを見て、少しだけいいなって思ってしまった。

「そう言えば大将、今日は出陣しなくていいのか?」
「ご、ごめんなさい、まだ私何をすればいいのかあんまりわかってなくて……おじいちゃんの時はみんなどうしていたの?」
「部隊を四つ作って出陣と遠征にいって、残った人で内番してたぜ」
「そうなんだ」
「大将が一日の担当を割り振りしてたんだ」
「私にそんなことできるかなあ」
「なぁに、やってりゃ慣れるよ。ちょうど一部隊分の刀が揃ったことだし、初出陣と行くか」

 薬研くんは、私よりうんと年下な外見なのに、経験が違うだけあって凄く頼もしく見えた。私がこれからここを取り仕切るのだから、彼にばかり頼っていてもいけないんだけど。

「そうだね。でも、怪我したら私が手当て出来ないかもしれないから、安全なところに行ってもらえる?」
「安全なとこ……五振り……いや、近侍を抜いて四振りしかいないってことを考えたら函館あたりが妥当か?」
「函館!? どうやってそんな遠いところまで行くの?」
「距離なんて関係ねぇよ。なんたって大将が道を開くんだからな」
「えっ? ええ?」

 困惑する私に、呆れることもなく薬研くんは説明をしてくれる。自分たちが行く戦場は現在の時間ではなくて過去の時間であること。歴史を変えるために敵が刺客を送り込んでくるから、そいつらが介入しないようにするのが自分たちの役目だということ。戦場への道を開くことができるのは審神者だけだということ。それから怪我した時の治療方法、戦場の地図の見方、などなど。地図はおじいちゃんが戦っていたときの記録が残っていて、どのくらいの数や刀の種類の敵が送られてくることが多いか(あくまでも可能性で、多少の増減はあるらしい)が詳細にメモされていた。

「なるほどね……説明ありがとう、わかったわ」
「あと出陣するときは必ず門を通っていたんだ。どうやって開いているのかの原理は俺っちにはわからねぇが、まあ大将ならわかんだろ。前の大将も感覚でやってるって言ってたしな」

 何振りもの刀を呼び出したものの、未だに原理はわかってない。とりあえず念じれば開くのだろう、と予想を立てた。感覚的なことが多いからおじいちゃんは私に説明をしてくれなかったのかな。それとも質問をきっかけに仲良くなって欲しかったから?

「そうだね。じゃあ薬研くんはみんなに準備して門のところに集まるように伝えてくれる? 私、準備のお手伝いできないし、色々確認してみたいから」
「わかった。出来るだけ早く行くから待っててくれ」
「ありがとう」

 戦場に行く準備だというのに、彼らはとても早く行動していた。私が門のところについてから数分の間で装備を済ませてやってきたのだ。簡単な戦場なのもあるだろうけど、それ以上に手馴れているのだろう。開け、と念じたら開いた門をくぐり、彼らは戦場へ消えていった。

「……おい、いつまでそこに突っ立っているつもりなんだ?」
「え?」

 なぜか一人、山姥切さんを置き去りにして。