(高校生土銀) 「坂田、デートに行こう」 「…はぁ?」 夏服が少し肌寒く感じてきた今日この頃。 昼休みに屋上でいちご牛乳とあんぱんを食べていれば、隣でサンドウィッチを食べていた土方がいきなりふと思い立ったように、まじまじと俺の顔を見ながら言ってきた。 「だから、デート」 怪訝そうな顔を向けたにも関わらず、土方は真面目な表情を浮かべて再度言ってきた。 「え、なにいきなりどうしたの」 「…いや、なんとなく」 「まだ授業あるべ」 「でもお前寝てるだけだろ」 「う…」 確かに。 昼食後の授業なんてお腹いっぱいで寝てるだけだし、いっそのことサボってしまおうか。 「…なんて言い訳すんだよ」 「昼に食った弁当に当たって腹下したから帰ります、でいいじゃん」 「ぷっ」 俺と土方はまぁそれぞれ違う言い訳して学校を早退した。 桂と辰馬にサボりだのなんだの言われたけど、そこは気にしないでおくことにする。 少し時間差で校門から出れば駅へと足を進めた。 電車に揺られて約10分。 着いた先は、横浜中華街。 「中華街とか久しぶり過ぎるわ」 「地元民は来ないからな」 中華街なんていつぶりたろうか。平日にも関わらず、相変わらずここは観光客でいっぱいだった。 平日の、しかも昼間に制服姿で中華街はマズったか、とか思ったけれど、意外にも修学旅行の学生の姿がちらほら見えたので少し安心した。 中華街に特に遊んだりする場所はなかったけれど、雰囲気が好きなのもあって豚まんをひとつ買ってふたりで半分ずつ食べながら歩く。 「…やっぱり豚まんは江戸清だな」 「歩き食べには最高じゃね」 俺がニカッと笑うと、土方もつられたのか目を細めて口角を少し上げて笑った。 しばらく中華街をだらだらと歩き、ゲーセンで遊んだりしていたら気付けは時刻は夕方の4時。 そのままふたりで山下公園へと足を運んだ。人はそこまでたくさんはいなくて、犬の散歩やら外国人の姿がちらほら。 俺たちみたいな学生の姿はなくて、少し浮いている気もする。 見付けたベンチに腰を掛けた。 横から差す夕日が真っ赤でなんだかすげぇって、ただそんなことを思いながら口を開く。 「…ねぇ土方」 「なんだ」 「ん、やっぱりなんでもない」 「なんだよ」 クスッと笑う土方の声がなんだか心地好い。 たまにはこういうデートっていうのか分からないけど、ちょっとぶらぶらしたりするのもいいかななんて。 「明日学校やだなー」 「行ったら俺に会えるだろ」 「うわっ恥ずかしっ」 「るせー」 自分で言っといて恥ずかしいのか、それとも落ちる陽の赤さかは分からないけど、土方のほっぺたは真っ赤だった。 遠くで船の汽笛が聞こえたら気がした。 放課後君と いつまでも ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ 47の愛に提出しました。 |