眠り姫は夢から醒めたpart2 | ナノ
クラシカル リビドー3/5

やっと主に喚ばれたのは、次の日の事だった。

セバスチャンは普段通りの身なりの整った執事の格好でシエルのもとへと戻った。

「遅いぞ」

尊大な口調の主人に、微笑を返す。

「貴方こそ。随分待たされましたよ?坊ちゃん」

シエルは、お人好しに毒されていたとアバーラインを一瞥する。
しかしそれも終わりだと言う彼に、執事は命ぜられた。

「セバスチャン、劉を追え。プレイヤーに逆らう駒など不要だ」

予想はしていた言葉だが、セバスチャンは少しばかり驚いていた。
リユの前で、劉を不要だとまで口にすると言う事に。
離れた所に立つ少女を見遣ると、彼女は顔色を変える事なくシエルの言葉を聞いていた。

「宜しいのですね、坊ちゃん。その命令、引き返す事は出来ませんよ」

念の為、セバスチャンは確認した。
だがシエルはきっぱりと言い切る。

「僕の前に立ちはだかる者は、例え、親だろうと友だろうと……、排除する」

覚悟の決まった声音に、執事は頭を下げた。

「イエス マイロード」


そこへ、馬車の御者台に居たアバーライン警部補がシエルに呼び掛けた。
しかし、シエルはそれを牽制する。近寄るな、死ぬぞと。

「僕は裏、お前は表。やはり相容れぬ道だ。アバーライン」

碧の隻眼は警部補から執事へと視線を戻す。

「セバスチャン、先にリユをタウンハウスへ連れて帰、」

「、シエルさん!」

主人の声を遮った少女が此方へ駆けて来た。

「平気です。私、アバーラインさんに送ってもらいますから」

「何?」

目を丸くする主人と同様に、執事も僅かに目を見開く。
聞き分けの良さが意外だった。

劉や藍猫に懐いていたリユなら、何かしら抗議してくるだろうと考えていたのだが。
それとも、アバーライン警部補を巻き込まないようにと気遣い、劉達の事は諦めるつもりだろうか。

黙って少女を傍観しても、その真意は読めない。


シエルは警部補にリユを任せると、執事を見上げた。

「行くぞセバスチャン」

「御意」

シエルを抱き上げたセバスチャンは、少女と警部補を見遣る。

「では警部補殿、メイドを宜しくお願い致します」

そのままその場を離れようと彼らに背を向けた。
すると唐突に、少女の声に引き留められる。

「待って…!」

驚くシエルと共に振り返ったセバスチャン。
やはり彼らを殺さないでくれとでも言うのかと思いきや。
そこにあったのは、笑顔だった。

そして。

「二人とも、迷惑掛けてごめんなさい。……いって、らっしゃい」

まるで別れを口にするかのような口振りの言葉。
それはやはり、諦めなのか。

だが何故かセバスチャンには、その考えが腑に落ちずにいた。
prevnext
[戻る]
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -