眠り姫は夢から醒めたpart2 | ナノ
clap4

※セバスチャンの日記です

○月×日
唐突に坊ちゃんに日記を書いてみろと命ぜられましたので、今日から端的にではありますが此方に記していきたいと思います。とは申しても。長い間生きていますが、日記をつけるなどというのは初めてで、些か何を記せばよいのやら思案致しますが、坊ちゃん曰わく、お前にしか書けないものを書け、との事。執事さえも御自分の享楽の道具にしようとは、我が主はなんとも我欲の強い御方ですね。

○月△日
今日はいつも以上にあの使用人達がやらかしてくれました。バルド、貴方がそんなに爆破を起こすのが好きだとは思いませんでしたよ。メイリン、何度言えば貴女は前後左右の確認が出来るようになるのです?フィニ、私は一度貴方にこそ除草剤を飲んで頂きたいものですね。ともかく、ファントムハイヴ家使用人にあるまじき目に余る惨状でしたよ。………まあ、毎度のことですがね。え?後始末、ですか?それは勿論、(こき)使えるメイドに頼んで起きましたよ。私は彼女の仕事に対する熱意を飼っておりますから。

○月○日
今朝から嫌な予感がすると思えば。魔犬が厨房に忍び込もうとしていました。全く、いつもどこから入って来るのやら。厨房の扉の前で魔犬の侵入を阻止しようと必死になる彼女の姿は大層滑稽でしたが。犬嫌いと言っていた割には、なかなか楽しげにじゃれあっているじゃありませんか。しかしながら、犬とはいえ見た目は全裸の男。ファントムハイヴの屋敷には好ましくない光景ですから、暫く叫ぶメイドを傍観したのち犬は外に放りましたけどね。

○月□日
劉様が藍猫様と御一緒にいらっしゃいました。相も変わらず唐突にやって来られますが、少しは、もてなさなければならない此方の身にもなって頂きたいものです。ジャスミンティーが飲みたいなどと御勝手なことを…。しかし、ファントムハイヴ家の執事たるもの、来客のどんな要望であれ満足にきくことが出来なくてどうします。至急、(こき)使えるメイドにジャスミンを買いに行かせましたよ。忠実に仕事をこなせたので、御褒美に彼女にも紅茶を出してみましたが。アメと鞭。……本当に頷ける言葉です。

      ・
      ・
      ・

○月▲日
何日か書いてきましたが、日記とはなかなか難しいものですね。そもそも、自己の内面を吐露した所で人間のように感傷に浸る事が出来る訳でもありませんから。ただ、退屈な夜のよい暇潰しにはなりました。しかしながら、坊ちゃん。仮にも他人の日記をこそこそ盗み観るような真似は如何かと。そんなに気になるのなら、最初から素直に仰れば宜しいのに。私は、あくまで執事。執事たるもの主人の命に逆らったりは致しませんよ?


「……こんな不快な日記は初めて見たぞ、セバスチャン」

「恐れ入ります」

「狽ソょ…っ、セバスチャンさん毒づき過ぎですよ!とくに2日目!“飼う”って何!?」

「言葉のあやです。お気になさらず」

「使う、にも何か含みを感じるな」

「ですよねですよね!シエルさんもそう思います?」

「僕に対してもだが、お前に対しても相当だなコレは」

「ていうか3日目!傍観ってっ、助けろよ!」

「嗚呼、あれはなかなか見物でしたよ」

「きっとセバスチャンさんの性悪さはその美人度に比例してるんですね」

「突っ込み所が多すぎる日記だな…………それにしても、」

「「……?」」

「誰かの観察日記みたいじゃないか」

「観察って…、誰の?」


「じゃれあってるのはどちらだろうな」



執事日記*
[戻る]
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -