その姫、既知4/4
「ほんとに連れて帰るんだー…」
荷物を積んだ馬車へ戻ると騒ぐ使用人のみんなと一緒に全裸の銀髪青年が居た。
アンジェラと話すセバスチャンから離れうんざり立ち尽くしていると馬車の椅子に腰掛けていたシエルが此方を向いた。
「何をしてる。早く乗れ」
「あ、はい」
帰りまでシエルの隣座るのもなぁ…。
そう思いメイリン達の乗っている後ろの馬車へ行こうとすれば、不機嫌な声で呼び止められた。
「リユはこっちだ」
シエルは自身の隣の椅子を手で叩く。
「え?良いんですか」
「また機嫌を悪くされたらかなわないからな」
「そんな事言ってー。シエルさん照れ屋ですねー」
「……セバスチャン」
「ぎゃああすみませんごめんなさいっ!大人しく座らせて頂きます!」
分かれば良いと腕を組む小さな主人は、ほんの少し微笑んだ気がした。
村から離れ揺れる馬車から上を見上げれば、平和なほど青い空が広がっていた。
「天気良いー♪」
手を翳せば雲が掴めそうな気がする。
「歌いたくなりますねーシエルさん」
「ならない」
「平和ですよねー」
「お前の頭がな」
「ひどーっ!!」
「やめろ!服を引っ張るな!」
(相変わらず迷いっぱなしだけど)(これだけは言える)(楽しい時間が少しでも続きますように…)
(その為には、強くならないといけない)
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