眠り姫は夢から醒めたpart1 | ナノ
その姫、曖昧1/3

「貴女、最初からあの死神の正体を知っていたでしょう」

「………」

「ねぇリユ、一体どんな秘密をお持ちなのか私に話してくれませんか?」

冷たい汗が背を伝った。

彼を本当の意味で悪魔だと感じさせられたのは今までに2回。
シエルと一緒に誘拐されて、人ならぬ力を存分に披露してくれた時と、クラレンスの店に初めて行った帰り道の時だ。

けれど、どちらも今ほど恐怖心を煽られはしなかった。

辺りの空気が冷えていく感覚と、心の中に広がっていく不安が私を追い詰める。
なに、これ…、すごく嫌な感じ。
クスリと笑う悪魔に鳥肌がたった。

それと同時に、全く別の感情が湧き上がる。


「……、ね」

「はい?」

至近距離でも聞き取りにくい呟きに、セバスチャンは私の顔を覗き込んだ。
その煌々と輝く紅い瞳を見つめて一言。

「今って羽根とか生えてませんか?」

「……は?」

今までに聞いたことがないほど間抜けな声。
紅い瞳も見る見るうちにもとの紅茶色へと戻っていく。
全く訳が分からないと言った様子の彼に私はもう一度口を開いた。

「だって今のセバスチャンさん超悪魔だし。もしかして羽根とか出てるのかなぁって」

それってめちゃくちゃ気になるじゃないか。

恐怖心より好奇心!
めったに拝めないものを見たいと思うのは人間の性でしょう。

悪魔の羽根ってやっぱり黒なんですか?と、固まっているセバスチャンの腕を揺すれば、彼は物凄く呆れた様子で溜息を吐いた。

「もう寝てしまいなさい」

そう言うや否や、彼は上体を起こしていた私を押し倒し頭までシーツを被せてきた。

「ぷは…っ!息できなくなるじゃないですか」

「嗚呼、貴女なんてそのまま窒息してしまえば良いのに」

「うわ酷…っ!」

扉に向かったセバスチャンはノブに手をかけた所で、何かを思い出したように此方を振り返った。
そして、自身の長い指を口元に添えて微笑を浮かべる。

「悪魔(私)の事が知りたいのなら、それ相応の代価が必要ですよ?」

え、なんか恐いその台詞。

「貴女にその覚悟があるのなら、いつでも訊きにいらっしゃい」

まるで、先程私が言った事の仕返しだとでも言うように。
セバスチャンはとびっきり嫌みな笑顔を作ってから部屋を出て行った。


「………はぁ」

安堵の溜息を吐いて微かに震える拳を握りしめる。

あー恐かった。
リユちゃんチキンはぁーとなんだよ実は。
しかも今から二度寝とか出来ないじゃないか。

枕元の、以前シエルから貰ったビターラビットに手を伸ばして抱きしめた。

どうしよう、かな…
暗い部屋の中で、私は明日の事に思いを巡らせていた。
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