眠り姫は夢から醒めたpart1 | ナノ
その姫、茫然1/1

背中に違和感を覚えて目を開けた。

「うわー空が広い」

視界いっぱいに広がるのは雲一つない青空。
じっと見ていると浮いているような感覚に捕らわれる。

……で?此処は ――

「Σ此処はどこー!?」

広々とした草地からガバッと飛び起きた。
見渡す限り手入れの行き届いた草地の真ん中に、ぽっつーんと座り込む私。

何なんだこれは…?
罰ゲームとか…?
いや、そんなはずない。だって私、家で寝てたし。

いつも通り遅めの就寝で何か寝付けないなーと思ってたらウトウトしてきて…
は…っ!!コレ夢?
とは思えないほどリアルな景色にリアルな感覚。
ほんと訳分かんない、とそろそろパニックに陥りそうになった私の視界の端に何かが見えた。

「う、そ…」

背の高い人影がこちらに近付くにつれて無意識に口から出た言葉。

「セバスチャン……」

某有名マンガ・アニメの悪魔で執事な彼がちゃんと三次元で燕尾服の裾を微かにはためかせて目の前にやってきた。

思考停止ー(゜△゜)

かなりの阿呆面で彼を見上げている私に執事サンが口を開いた。

「私この屋敷の執事セバスチャンミカエリスと申します。貴女はどちらさまでしょう?」

にっこり微笑んだ口元と、そこから紡ぎ出された声に背中がぞくりとした。
ああ…こういうのを色気っていうのか。

倒れそうになる自分を激励し

「リユ スズオカ、日本人です」

ひとまず自己紹介。
だって…!!ほかになんて言っていいのか分かんないくらいパニックだし!

「そうですか。何故此処に?」

相変わらず笑顔の彼。

「分かりません。気づいたら此処にいました」

「そうですか。お家はどちらに?」

「…ありません」

「ではリユ、私について来て下さい」

言うなり、彼は座り込んだままの私をふわりと抱え起こした。

…今、気付いたけどセバスチャンすごく背が高い。
私は彼の胸あたりにも届かない程、小さかった。
そんなスタイル抜群美形執事についていくと、アニメで観てた以上に立派な屋敷にたどり着いた。

「どうぞ、こちらへ」

中に案内され広い廊下を進んでいく。
そして、ひとつの扉の前に着いた。

「坊ちゃん、お連れしました」

「入れ」

開いた扉から部屋へ足を踏み入れると、真正面に手を組んで椅子に座っている少年がいた。
右目に眼帯をつけた大人顔負けの威圧感を持つ子ども ――
言わずと知れた、シエルファントムハイヴその人だった。

「まさか子どもとはな」

少しの驚きを含んだ声。

ていうか子どもって…
私これでも君より年上だよ?と言いたいのを堪える。
だって相手は12歳のやり手社長だし!

「僕はシエルファントムハイヴ。この屋敷の当主だ。お前の名前は?」

…憎たらしい自己紹介。まあ、伯爵だし仕方ないけど。

「リユ スズオカ、日本人です。勝手に敷地内に入ってすみませんでした。でも、どうやって此処にきたか分かんなくて」

自己紹介プラス謝罪を述べると御当主様は興味深げに身を乗り出した。

「記憶がないのか?」

「ん、まあ…」

曖昧にしか答えない私に代わってセバスチャンが口を開いた。

「彼女には帰る家が無いようです。如何なさいますか、坊ちゃん」

“帰る家がない”
そんな言い方したら悲劇のヒロインみたいじゃん。
シエルも切なそうに目を伏せないで!

「リユ、と言ったな」

「は、はい」

「お前を我が屋敷のハウスメイドとして雇おう」

え、まじで?

それは助か――

「Σえぇえぇぇ…っ!!!」

私があげた突然の奇声に美男子2人はビクッと固まった。

「な、なんだ…不満、なのか…?」

「いや、そんなことないです…が、」

「が、?」

だって私アニメ観てたんだよ!!
ここの使用人トリオの秘密もこの前観たし。
まあ、まだ「その執事、雇傭」までしか観てないから、その先の展開は知らないけど。

Σは…っ!!
でもやばくない?
アニメ展開だったら私この世界で生きてく自信がない。

マフィア恐いし、叔母様とか支店長とかの結末知ってるし、死神とか出てくるし、ヤバめな天使さまとか本気で恐い!!
しかも戦えない…!!


「…ぃ…ぉぃ…おい!」

「へ?」

完全に自分の世界にトリップしてたら大声で呼ばれて現実に引き戻された。

「へ、じゃない。で、どうするんだ。働くのか働かないのか」

「え…でも、あんまり役に立たないと思うんですけど…」

ちらりと隣に立っている彼を見上げると、にっこり微笑み返された。

「心配なさらなくとも仕事はお教えしますよ」

「だそうだ。どうする」

どうするったって…このまま放り出されたら困るし。
…仕方ない。覚悟を決めた。

「それじゃあ、よろしくお願いします」

「決まりだな」

こうして私の新たな生活が幕を開けたのだった。



(ところでリユ、年は?)(じゅーろくです!)((…!?))(え、なに?)((見えない…))


(ちびの童顔で悪かったな!)

[戻る]
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -