その姫、逃走2/2
「あれ、バルドさんどこか行くんですか」
夕方、勝手口から出て行こうとするバルドを呼び止めた。
「ああ、ちょっと食材を探しにな」
新しいメニューを思いついたんだぜと笑う彼に、キッチン破壊したら駄目ですよと心の中で言ってみた。
「私もついていったら駄目ですか?」
「リユがか?別に俺は構わねぇが、それなら一言セバスチャンに…」
「ほんと!?じゃあ行きましょう!」
「え、おいっ」
バルドの背中を押し急いで屋敷から出た。
ここで声なんてかけたらセバスチャン避けてた意味が無くなるし。
だいたい私、まだ買い物行ったことないんだよね。
好奇心が疼くじゃないか!
「うわぁーかわいい」
「可愛い?」
街につくなりはしゃぐ私を見てバルドは首を傾げていた。
「だってヨーロッパって感じがすごくするじゃないですか」
いいよなぁこういう街並み。
かなり好みなんですけど。
「少しだけ見て回ってきてもいいですか?」
「ああ、いいぞ。そのかわりあんまり遠くまで行くなよ。俺はあっちの店に行ってるからな」
「はい」
ぽんと私の頭に手を置いて、彼は「気をつけてな」と言ってから去っていった。
小さな商店街みたいなところを歩いていると、ショーウィンドウに見たことのあるぬいぐるみを発見した。
「ビターラビット…」
すごい。いっぱい置いてある。
お店から出てきた女の子もビターラビットを抱えしあわせそうに笑っていた。
なんか皮肉だな。人をしあわせにできる人はしあわせじゃないなんて。
最近はセバスチャンに追いかけられてる私を見て笑ってるけど。
そんな事を考えてるうちに時間が経ち、私は慌てて戻ろうと路地を曲がった。
……通り間違えてる。
どう考えてもこんな陰気な所じゃなかった。
狭い路地には怪しそうな男が彷徨いていた。
直感的にやばいと思った私はUターン。
「………」
後ろに立っていたのは、かなり危ない雰囲気の男3人組。
「どいて下さい」
「迷子か?お嬢ちゃん」
「いえ、全然違います」
どうしよう!マジでピンチだ。
「俺達が案内してやるよ」
にやりと品の欠片もない笑いを口元に浮かべた男が私の腕を掴んだ。
「ちょっ、離して下さい」
必死に振り解こうと腕を振るも、まったく無意味。
「案内してやるって言ってんだろ?」
気付けば囲まれていて、まるで映画のワンシーンみたいになっていた。
(案内とか結構です)(いいからついてきな!)(セ…、セバスチャンさーんっ!!)
(こういう時こそ現れて!頼むから!)
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