その姫、名前1/2
すごいすごいすごい!
私、今シエルと一緒にお茶してる!
しかも、セバスチャンの用意してくれた紅茶とケーキが目の前にある…
「どうした?食べないのか?」
じっと見つめるだけで何も口を付けない私に、シエルが問いかけてきた。
「いただきます…ん、どうかしました?」
不思議そうに、こちらを見る彼。
「いや、日本の作法か」
ああ、頂きますって手を合わせた事か。
そうだよなぁ、ここイギリスだし。
「おかしかったですか」
「いいや」
シエルは優雅に紅茶を飲んだ。
私も美味しそうなケーキを口に運ぶ。
「おいしい…」
苺のふわりとした甘酸っぱい香りが口いっぱいに広がる。
「だろう?セバスチャンのスイーツは一流だからな」
「恐れ入ります」
隣でにこりと微笑むセバスチャン。
悪魔の作る最高のスイーツ。
まさか自分が食べれるとは思わなかったなぁ。
「未来にはどんなスイーツがあるんだ?」
「え?」
ティータイムも終わりに近づいた頃、頬杖をついたまま彼が言った。
「んー、そんな珍しい物はないと思いますよ。作る技術とかは上がってるだろうから、味は変わっていくのかも知れないけど」
よくお菓子食べてた割には、あんまり詳しく知らないなぁ。
「なら、日本のスイーツは?」
日本か、でも私ほとんど和菓子食べないし。
「何だろ。抹茶を使ったお菓子とか…あ!桜だ!」
「桜?」
「日本にあるピンク色の花です。それをモチーフにしたスイーツとかありますよ」
私、桜のソフトクリームとか好きだったし。
「桜か…よし、セバスチャン。今度のスイーツは桜を使って作れ」
「桜ですか」
マジ?ていうか、桜の木も何とかするつもり?
「では、僕は明日の準備があるので、これで失礼する」
「ありがとうございました。あ、」
立ち上がって、私は彼を呼び止めた。
「あの、坊ちゃんじゃなくてシエルさんって呼んでもいいですか?」
「…別に構わないが」
「ありがとう」
そう言って微笑んだら、何とも言えない顔をされた。
また変な奴と思われたかな。
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