眠り姫は夢から醒めたpart1 | ナノ
贈り物

「やあ伯爵。こんにちはー」

シエルに言われて書類の整理を手伝っていたら、ノックと共にチャイナ服の男性が入ってきた。

「劉!?」

驚いて手にしていた本を落とすシエル。

「何しにきたんだ」

「冷たいなぁ。伯爵が怪我をしたって聞いたから、お見舞いに来たんじゃないか」

彼は暢気に笑って、勧められてもいないのに勝手にソファに座った。

「でもその様子じゃ元気そうだねえ」

劉は細い目を私に向け手を振ってきた。

「君とはこの前会ったよね?」

「はい。リユ、です」

「そうそう、リユ。君にプレゼントがあるんだよ」

抱えていた大きな箱をテーブルに置いて彼は言った。

「君に似合うと思ってね。我が選んだんだ」

「おかしなものを持ってきたんじゃないだろうな」

箱を開ける彼をシエルは腕を組んで睨む。
変なものって、まさか阿片!?
って、そんな訳ないか。

「嫌だなぁ、伯爵ってば人聞きが悪い。ほらコレだよコレ」

ふわりと箱の中から出てきたのは鮮やかな色の服。

「「チャイナ服?」」

「我の国の伝統的な民族衣装さ。可愛いだろう?」

青みを帯びた緑のチャイナドレスには、銀糸で繊細な刺繍がしてあった。
でも、超ミニ。有り得ないくらいミニ。
ついでに言えば胸元が開きすぎているのも気になる。

「素敵ですね」

見てるだけならだけど。

「気に入ってくれたかい?我は是非、君がこれを着たところを見たいんだけどなぁ」

そんな満面の笑みで言われても…
助けを求めるようにシエルの方を向くと面倒くさそうに溜息をつかれた。

「彼女は仕事中だ。邪魔をするな」

「それは残念。でもまあ受け取っておいてよ。気が向いた時にでも着て我に見せに来てほしいな」

「はい、考えておきます…」



「うーん…やっぱりこれって嫌味?」

「なんのですか?」

夜、貰ったチャイナドレスをベッドに広げていたら、耳元で声が聞こえてきた。
当然、私はお決まりの悲鳴を上げる。

「なんで勝手に入ってくるんですか」

美人だからって何でも許されると思ってるのか。

「勝手にではありません。ちゃんと声はかけましたよ」

気付かない貴女が悪いんでしょう、と呆れられた。
いつの間にか私が悪いみたいになってるんですけど。

「で、何が嫌味なんですか」

「あ、ああ。これです。劉さんから貰ったんですけど」

広げられたチャイナドレスにセバスチャンも視線を落とした。

「嗚呼、確かにリユの発達していない身体には少々不似合いですね」

「………」

確かに似合わないですけど。
未発達ですけど。
そんな爽やかに言うのはどうかと思います。
というか軽くセクハラなんじゃないか。

「リユ?」

彼は黙り込んだ私の顔をのぞき込んできた。

「怒ってるんですか」

「違いますー」

「もしかして傷つきましたか?」

心配というより、からかうような口調。

「傷ついてもいません。幼児体型なのは自覚してますから」

こんな色気のあるチャイナ服が似合わないのもよく分かってるし。

するとセバスチャンは急に膝を折って私に目線を合わせてきた。

「良いじゃないですか。貴女はそのままで可愛らしいんですから」

唐突に歯の浮くような台詞を言われ、思わず頬が熱くなった。

「それに。そんな姿にもそそられますしね。なんなら私がお手伝いしましょうか」

微笑を浮かべる彼にぞくりとした。

「色気のある身体、欲しいでしょう?」

「死んでみてください」


(問題発言多すぎるよ執事サン)(一瞬でもときめいた私が馬鹿だった)(なんか悔しい!)

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