眠り姫は夢から醒めたpart1 | ナノ
春のスイーツ

使用人の朝は早い。
6時には使用人室に行かなきゃならないし、私は5時半には起きるよう心掛けていた。
が、今日はいつもより早く目が開いた。
二度寝するのもなぁ…

よし。屋敷探索しよう。
クローゼットから、支給された特注のメイド服に着替える。
私が余りに小柄だから、というか体にボリュームが無さ過ぎてサイズが無かったらしい。
ややこしい服の作りに悪戦苦闘しながら、なんとか着替え終わり部屋を出た。

「あ、」

2階の廊下の窓から、まだ霧が深い庭を眺めると黒い燕尾服の後ろ姿が目についた。
と、ふいに整った顔がこちらを見上げる。

「おはようございますリユ」

「お、おはようございます」

この距離から私に気付くとは思わなかった。
流石、

「悪魔で執事、ですね…」

「ええ。私はあくまで執事ですから」

セバスチャンは綺麗な笑顔を作ってそう言った。
実際にその名言を聞けるなんて感動なんですけど!

「ちょうど良かった。こちらに降りてきてくれませんか?」



「以前坊ちゃんにお話されていたでしょう」

屋敷の裏庭にそびえ立つ一本の木。
私はそれを驚きの眼差しで見上げていた。

「日本の桜です」

淡いピンクの花びらがゆっくりと霧の中を舞う。

「すごい…これどうするんですか?」

私の問いにセバスチャンはにっこり笑った。

「坊ちゃんにお出しするスイーツを作るんですよ」



「かわいい…!!」

シエルに誘われて一緒にお茶をする事になった私。
目の前に置かれたスイーツは、ピンク色のロールケーキだった。

「何これ可愛すぎ!桜も乗ってるっ」

「砂糖漬けにしてありますから花も食べられますよ」

それからセバスチャンは紅茶を指して言った。

「本日は、桜の紅茶も御用意させて頂きました」

「まじですか!」

「うるさい。興奮しすぎだ」

私に一瞥してからシエルはケーキを口に運ぶ。

「独特な香りだな」

「生地には桜の香りをつけてあります。クリームはバニラ風味に致しました」

ふわふわのロールケーキは口の中で溶けていった。
残るのは桜の甘い味。

「美味しい…」

「確かに悪くないな」

御満悦なシエルは見ていて微笑ましい。

「何をにやついている」

「楽しいなぁと思って」

「…リユ、頬にクリームがついてるぞ」

「えっ嘘!?」

何それ格好悪い。
私は慌てて頬を触った。

「違う反対だ」

「反対って、……っ!!?」

「とれましたよ」

「な、な、何を…っ」

笑顔のセバスチャンを見つめながら頬をおさえる。

「ですから、ついていたクリームを取ったと…」

「どうやって」

「勿論、舌でですが?」

それが何か?と、彼は妖しい笑みを浮かべた。


(ぎゃあああーっ!!)(全く静かに出来ないのか)(シエルさんは冷静すぎです)(騒がしい人ですねぇ)(誰のせいですか!)

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