眠り姫は夢から醒めたpart1 | ナノ
少しの興味

この名は契約の証
自分と主を繋ぐ鎖
ただ、それだけ―

“個人を指す大切な証”

彼女はそういって無邪気に笑った。

くだらない、と彼は思う。
純粋な笑顔が気に食わなくなり、思わず言い返した。
が彼女は、今度は真剣な顔になって、名前は
“最初にもらう愛情”
と言ったのだ。

愛、という言葉に顔がひきつる。
“愛情”それは、自分がもっとも必要としないもの。
そして何より嫌悪さえ抱くものなのだ。

「与えられた名が自分にとって何の価値もない無意味なものなら、その名で呼ばれるという事に何の意味があるのです?」

愛が込められているからこそ、その名で呼ぶことに価値がある?
実にくだらない。
彼にとっては、ただの鎖でしかないのだから。

しかし彼女は平然と言い放った。
「自分でその名を好きになれるよう努力すればいい」と。

あまりに単純な答えに、一瞬言葉が出なかった。
そして、自分の言ったことに簡単に切り返してくる彼女に驚いて。

黒い瞳はこちらをまっすぐ見つめてくる。
何を考えているのか、いまいち掴めないその瞳に
興味を抱いた。
主以外の人間には持ち合わせていないはず。

だが―

額にキスをおとし、呆然とする彼女の手から滑り落ちたカップを受け取った。

「お休みなさい」

静かに、部屋の扉を閉めた。


(それは彼の僅かな変化)

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