眠り姫は夢から醒めたpart1 | ナノ
その少女は、

「本当だと思うか」

椅子にもたれ掛かったまま、戻ってきた執事に問う。

「未来からやってきたなど」

「嘘をついている、と?」

「いや、そうは見えなかったが」

自分より幼く見える彼女を思い浮かべる。
特に怪しい感じもなく(時々上げる奇声は気にかかるが)普通と言えば普通の少女だ。
セバスチャンに目を向けると、彼は頷いた。

「そうですね。少々信じ難い事ですが、私にも彼女が偽りを言っているとは思えません」

「そうか…」

彼が言うなら本当だろう。
悪魔は嘘をつかないのだから。

未来からきた少女―

(未来、か)

あまり興味は沸かない。
未来などない自分が、遙か先のことに興味を抱くなど馬鹿げている。

「ただ、」

沈黙を破ったセバスチャンの声。

「ただ、なんだ」

「嘘ではなく、隠し事はあるようですね」

「隠し事か」

シエルは納得したように呟いた。
それが彼女に引っかかりを覚える理由だろう。

幼く見える容姿の裏に何かがある。
そういったことに人一番敏感なシエル。

「彼女から目を離すな」

「イエスマイロード」


(警戒していた。この時はまだ)

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