その少女は、
「本当だと思うか」
椅子にもたれ掛かったまま、戻ってきた執事に問う。
「未来からやってきたなど」
「嘘をついている、と?」
「いや、そうは見えなかったが」
自分より幼く見える彼女を思い浮かべる。
特に怪しい感じもなく(時々上げる奇声は気にかかるが)普通と言えば普通の少女だ。
セバスチャンに目を向けると、彼は頷いた。
「そうですね。少々信じ難い事ですが、私にも彼女が偽りを言っているとは思えません」
「そうか…」
彼が言うなら本当だろう。
悪魔は嘘をつかないのだから。
未来からきた少女―
(未来、か)
あまり興味は沸かない。
未来などない自分が、遙か先のことに興味を抱くなど馬鹿げている。
「ただ、」
沈黙を破ったセバスチャンの声。
「ただ、なんだ」
「嘘ではなく、隠し事はあるようですね」
「隠し事か」
シエルは納得したように呟いた。
それが彼女に引っかかりを覚える理由だろう。
幼く見える容姿の裏に何かがある。
そういったことに人一番敏感なシエル。
「彼女から目を離すな」
「イエスマイロード」
(警戒していた。この時はまだ)
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