迷い込んだのは…
―何か、きた。
侵入者の気配を敏感に感じ取った執事は、窓の外へ鋭い視線を向けた。
「侵入者か」
椅子に腰掛けていた主は顔も上げずに、ぽつりと呟く。
「そのようですね。ですが―」
言葉を濁すセバスチャンに、シエルは怪訝な様子で書類から顔を上げた。
「何か違いますね」
人ではないのか―
今までにない不思議な気配。
「ふん。今日は暇だからな。退屈しのぎにはなるだろう」
主は不敵に笑って
「セバスチャン、侵入者を連れてこい」
「イエス・マイロード」
気配のする方へゆっくりと進んでいく。
自分にも察しがたい気配を放つ侵入者は、一体何者なのか。
僅かな興奮と共に歩みを速めれば。
広い庭の真ん中に小さな少女が座り込んでいた。
黒い髪に黒い瞳。
見たことのない変わった服装。
似ても似つかない容姿だが、ほんの一瞬、
少女が
天使に見えた。
(この胸騒ぎの理由を、彼はまだ知らない)
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