福井健介くんとお別れしてからその日の夜、あのまますっかり眠ってしまった私は日が沈んだ頃に起き上がった。
それほどお腹も空いていなかったため軽くでいいやと思い、買いだめしてあるカップラーメンの中からお気に入りのモノをチョイスする。ウチにはポットがないため、まず鍋に水を入れ、それを沸騰させることから始めなければならない。
それを待っている間に電話帳を開き、彼の番号を登録した。
それによって、LINEの『友達かも?』の欄に『福井健介』という名前が浮上してくる。アイコンがベースの写真だったので福井くんで間違いないだろう。これが彼のベースなのだろうかと思いながら、そのまま友達に追加し、挨拶がてら短めの文とスタンプを送る。
そういえば、このスタンプもあの人と悪ふざけの勢いでお揃いで買ったものだったなと思う。
……消すか、と考えつつも、まあスタンプに罪はないからな、と一人で自己完結させ、ちょうどお湯も沸いたのでそのままLINEを閉じた。
ブブブ、という携帯のバイブ音で意識が浮上する。
まだ覚めきっていない頭で近くに置いてあった携帯を手に取り、時刻を確認する。
こんな深夜に誰だ馬鹿野郎。
どうやらバイブ音の原因はLINE通知のようだった。
基本的に会社の上司からの連絡以外は通知をオフにしているため、こんな夜遅く連絡してくる人が誰なのか皆目見当がつかない。
もぞもぞと体勢を少し整え、表示された名前を見てみる。
『福井健介』
──ああ、あの子か。
となり、そのまま画面を開く。まだ少し頭が眠っているみたい。
『夜遅くすんません、お疲れ様です。今日バイト終わったら連絡するんで。多分15時ぐらいになると思います』
はいよー、とまだふわふわな頭の中で返事をしていると、また次のバイブ音が。通知オフに切り替えしなきゃ……と思い、トーク画面を開く。
『まだ起きてたんですか?それとも俺の通知で起こしちゃいました?それだったらすんません。それじゃあまた後で。おやすみなさい』
恐らくすぐに既読の文字がついたのでそう思ったんだろう。そうしてウサギが寝ようとしているスタンプが送られてきた。
えー、スタンプ使うんだ。へー、ふーん……。
少し胸の中がざわりとしたが特に気にすることもなく、こちらも適当にスタンプを返し、その後、私も再び眠りの体勢に入った。
が、どうにもウサギのスタンプが頭にちらついてくる。
それからもしばらくもぞもぞとしていたのだが……。
(……眠れん…!なんで!しかも眠りの邪魔をされてプチイラなはずなのに!たかだかスタンプ一つで許そうとしてるし、そのスタンプを選んじゃう福井くんが想像できちゃうし!どうしたんだ私!しっかりしろ!)
どうにも今朝から気が緩んでいるようで、いちいち自分を一喝しなければならなかった。
明日は、というか日付的には今日だが、少し早めに起きてスーパーに行くんだから!
明日会ったら通知音で目が覚めちゃったこと文句言ってやる。
……ていうか、ウサギのスタンプ送ってくる福井くんかわいいなんて、そんなこと全然思ってないんだからね!!