「暑い…、溶ける」

ソーダ味の涼しげな水色をしたアイスキャンディも、既にとろけ気味だ。それを咥えた汐は、首にまとわりつかない様に長い髪を高く結い上げている。

「ひぃ兄ちゃん、暑い…」
「夏だからな」
「…暑い」

ぐったりした双子の片割れと、案外けろっとしている兄に、轟太はため息をついた。轟太のカップアイスも大分溶けてきている。

「夕飯何食べたい?」
「…アイス…」
「こーら、スカートでごろごろすんじゃありません。てか、それは夕飯になりません」
「あ、アイスあたり棒出た…、兄ちゃんもう無理、アイスしか浮かんでこない」
「汐…、我慢しなさい。心頭滅却すれば火もまた涼し、無の境地だよ、無の境地」
「…その前に液体化する。轟ー、アイスあたり棒ー」
「聞こえてるよ…、つーかスカートで寝転がんな」
「轟ー、溶けちゃうー」
「あっちーよ!一々抱き付くなこらぁぁぁ!!」


この分では後少しのアイスが溶け切ってしまう。汐を何とかひっぺがした轟太は、最後の一口を放り込んだ。どろりとした甘さ、ぬるさに轟太は再び息を吐き出す。


「……あ、そうだ」


突然むくり、と起き上がった汐はあたり棒を片付け、ぱたぱたと部屋を出ていった。

「ひぃ兄ちゃん、轟、早く早くー!」
「え、外出るの?」
「あっちーのに何でわざわざ…」
「先行くよー!」

一気に元気になった声が響いて、ばたん、とドアが閉まった。緋色と轟太は互いに顔を見合わせる。

「…何あいつ」
「さぁ…」








じりじりと降り注ぐ日光に、轟太は目眩を覚えた。何だかんだで外に出てしまった自分は、やはり片割れに弱いのだ。緋色はきょろきょろと辺りを見回す。

「汐ー?…あれ、どこ行った?」
「暑い暑い暑い暑い…」

帰りてぇ、と轟太が呟きかけた、その時である。



「隙ありィィィィ!!」
「は、何…っぶは!」



勢い良く、それは轟太の顔に命中した。

「…ぷ、あははははっ、轟びしゃびしゃ!髪ぺたんこー!!」

けらけらと笑う汐の手には、青いホース。水道に繋げられたホースからは、じょばじょばと水が溢れている。

「…あーあ…」

緋色は思わず、口元を引きつらせた。ぼたぼたと轟太の金髪から滴が垂れる。上半身はほぼびしょ濡れだ。しかも出始めなため、水はぬるかったであろう。冷たいならまだ気持ちが良いのだろうが。


「汐……、しばく!」
「え、ちょ、やぁぁぁ!!」

ぎらりと目を光らせ、轟太が汐に突撃した。素早くホースを奪い、片腕で汐を拘束する。

「やだやだ轟っふぎゃ!」

ホースの口を狭めたために、勢いを増した水が汐に直撃する。頭から水を被った汐は、ぷはぁ、と息をついた。

「水ぬるー、気持ち悪ー」
「兄貴!」
「え、ちょ、俺もかっぶ!」
「あ、水冷たくなった!轟、轟っ、もっかい!」

飛沫を受けた汐が、目を輝かせている。轟太がホースを向けてやると、きゃー、と楽しそうな声が上がった。


「…お前ら…」
「…げっ」
「お?」


さっ、と轟太の手からホースが奪われた。にっこりと笑った緋色はホースを高く持ち上げ、


「ちょっと頭冷やしなさい」
「ぎゃああああ痛ぇ水圧やべぇ兄貴!」
「うきゃああああつべたー!」

頭から双子が水を被る。ホースの口を狭めるオプション付きだ。

「…とう!」
「あ」
「反撃開始ー、うりゃうりゃ!」
「ちょ、ぶはっ、こら汐!」
「え、やああああごめんなさあああははははは!!」
「あっちーのに引っ付くなよ…」


緋色にくすぐられる汐の笑い声をBGMに、轟太は地面に落ちたホースを拾い上げ、自分で頭から水を被る。冷た、と呟き、轟太は小さく笑った。さて、次はどちらに水をかけてやろうか。



青と白が夏を生む





初代ブイズ三兄弟。
単にきゃっきゃ騒いでるのが書きたかったというか。
緋色兄ちゃんの原型で水食らうと死亡フラグ(^q^)



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