アルファルドとは、うみへび座のα星の事である。周囲に明るく輝く星がなく、アルファルドだけがぽつんと橙色に煌めいている。その様子から付けられたアルファルドの名の意味は、





「孤独なもの」である。





アルファルドは、自らの名があまり好きではなかった。孤独なもの、などという意味を持つ名を嬉しく思う者はそうはいないだろう。それにそもそも、アルファルドは孤独が嫌いであった。


「アルファルド、アルファルドかぁ…」
「…どうしたの?」
「うーん、お前の名前めんどくせーのな」

頬を掻きながら言った湊に、アルファルドは怒らなかった。自分でも確かにそうだと思ったからである。

「…うし、お前らちょっくら集合!こいつのニックネーム考えんぞー!」
「え、あの」
「…湊サン、いきなり何、意味不明なんだけど」
「みな」
「うっせーうっせー!甚超うっせー!!」

アルファルドが何か言う間もなく。湊の一言により、アルファルドのニックネームを決める会議はさっさと進行していった。口を挟めずにずっと待っていたアルファルドには少し長く感じたものの、実際はあまり時間も経っていなかったであろう。


「アルル!」


それで決まりな、とまだ少年っぽさを残した笑みを浮かべて言った湊に、アルファルドは知らず知らず頷いていたのであった。餓鬼だなんだと言われていても、やはり彼はリーダーに相応しいのかもしれない、とアルファルドはぼんやり思った。彼の笑みには、人を惹き付ける力がある気がした。


アルル。


そのニックネームも、しっくりと耳に馴染む様な気がした。アルル、とアルファルドは一人小さく呟く。それと同時に、彼女は少し泣きたくなった。


もしかしたら、自分は無意識の内に自らの名前を枷にしてしまっていたのかもしれない。アルルと呼ばれる事で、本当にもう自分は孤独ではないのだと安心できた気がした。





それからしばらくして、アルファルドは一人称を「アルル」に変えた。自分でも子供っぽいとは思ったが、それは願掛けやまじないの様なものだった。嬉しかったのだと、思う。「孤独なもの」から離れた事が。


「…アルルよォ、初めよか明るくなったな」
「…そう?」
「何つーかな…、荷が降りたって感じか?」

伊克椎の言葉に、アルファルドは納得する。確かにそんな気分かもしれない、と思いながらアルファルドは小さく笑った。





アルファルドはまだ知らない。アルファルドが、「蛇の心臓」とも呼ばれる星である事を。自らの名が、体の中で脈を打ち、命を繋げる心臓の様に大切な存在であれ、と願いがこめられたものである事も。

はてさて、彼女がいつ、それを知るか。



「それはまた別のお話ですよって」
「…空快、誰に向かって言うとんよ」



うみへびの涙よ、
空へ還り、星となれ。





アルファルドの名前の話でした。
正確に言えば、「蛇の心臓」の意味の場合はコル・ヒドレって名前に変わるんですが、まぁ…同じ星だし←
アルファルドがアラビア語由来で、コル・ヒドレはラテン語だったと思います。
ジョウト組をちょろちょろ出せて楽しかったです。



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