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#14 太陽に灼かれる


真夏を照らすその光に真っ直ぐ手を伸ばす

穢れを見せずに輝くそれに

誰もが目を離せずに惹かれていく

黄金色に輝いてゆく一面を見ては

僕もいつか輝けるのだと信じていた


上へ上へと伸びる向日葵に負けないよう

葉の下で光を求める小さな花は上を見上げる

離れればいいと分かっているのに

例え影を浴びても光を求めるのを辞められない

向日葵に近づこうとするマリーゴールドに

僕はそっと花弁を撫でた



2023/08/27 23:04 (0)

#13 摘まれた羽


ふわふわの羽に包まれる

寝ぼけ眼でそっと頬擦りすれば

僕に温もりを残す大きな羽

まだ覚め切らない思考で周りを見渡せば

大きな翼に捉まり身動きも取れない


碌な思考も出来ぬまま

ふわりふわり。

流されてしまえば

夢の中へ引き摺られる


目覚めの珈琲の香りに酔いしれて

白い羽根を掻き混ぜてしまえば

もう後には戻れない


にがいにがい、そんなおはなし。



2022/10/23 16:05 (0)

#12 亀裂に酔う


僅かな隔たりは重なり透明な罅が入る

気付かず手に取ったそれに水を注げばもう手遅れ

見えない罅から水が溢れ、グラスも割れる

どれ程修復しようとしても完全には戻らない

「今までのどれよりお気に入りだったのに」


それを壊した切っ掛けが僕だとしても

それを直せるのは僕じゃない



2022/10/18 13:34 (0)

#11 夜闇に飛ぶ


息を止める。

喧噪から逃れるように耳を塞ぐ

光が眩しくて目を瞑る

今日が終わらぬように上を見る


どうしたって消えゆくのに、

僕はそれを認められない

弱い心を見透かすように君は

僕を箱へと押し込んだんだ


ねえ、もしも僕がこの夜に消えたのならば

僕はあの光になれるだろうか


残念だけど時間切れだ



2022/07/18 22:55 (0)

#10 失われた過去


此処に在る僕は

全て僕が選んだ痕で。

ただ一つの選択の結果次第で僕は不在()


僕は此処に不在()かったかもね、なんて

君は嫌だと言っていたけれど。

君の全てが塗りつぶされた今では

君さえいなければと願ってしまうんだ


あの時光をくれた君はもう不在()いのなら

最初から逢わなければと願ってしまう僕は


本当のことなんて何一つ君に

伝えられていないのよ



2022/07/18 22:22 (0)

#9 黒薔薇の花弁を編む


小さく囀る君が可愛くて、

奇麗な羽を震わす君が愛おしくて、


君が怪我をしないよう。

風切羽を丁寧に整える


さあ、できた。

これで好きなだけ自由に飛べる

疲れたらいつでもおやすみ


この籠の中が君の生きる場所だから



2022/07/02 17:56 (0)

#8 ぼくはわるいこ


風に吹かれて飛ばないように

透明な檻で匣を創る

凛と奇麗な薔薇が咲く

どんな嵐が来ようとも

決して散ることの無いように


さあ、早く薔薇を探そうか

僕の為だけに咲いていてよ



2022/07/01 11:30 (0)

#7 解かれぬ金縛り


夢を見ていた

永久に醒めぬ夢を。

貴方の後姿を感じた気がして

追いかけたって声も掛けられない

どうして、どうして、

貴方がかけた呪縛が

どうしたって解かれやしない


ずっとだなんてそんな嘘。

叶えもしないなら言わないで


お願い、夢でも近づかないで

永久に記憶から消えることはない

なれば今後足枷にはならないで


貴方に縛られはしない

嫌悪だけ抱くのは嫌だから。


いっそ無になれ。

さよなら、__。



2021/12/10 00:09 (0)

#6 小さな燈火


ただ夢を見ていた

堰を切った様に水は止め処なく流れ、

泥をも飲み込み勢いを増す

この世界を呑み込むような水流

呆然と流されていた


ふと。

暗闇の中でゆらりと揺らめく

怖い。私が私で無くなってしまう。

気が付けば縋り付いていた

それは。

激流に呑まれても決して消えることのない

ひかり。



2021/10/18 12:06 (0)

#5 水面に揺蕩う


きらきら煌めく世界

時間も忘れ、息を呑む


穢れた空気とは裏腹に

透き通るような箱の中で泳ぎ続ける


いつからだろうか

この場所から動けなくなってしまったのは


「でもね」

「ここに来たいといったのは君だよ」

真っ暗闇の中、目を瞑る


ただ醒めない夢を見る



2021/10/17 16:16 (0)
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