3
「待って…!!」
目を開けると、そこは見慣れない部屋の風景だった。
そうか。ここは…木の葉の里。
「夢じゃなかったんだ…」
どこかでこれは夢なのではないかと期待していた私は、少しガッカリしながらその場でのびをした。
椅子に座ったまま寝てたからな…、体が痛いや…。
窓の外を見ると、もう既に太陽は昇って少し時間が経っている様だった。
「はぁ…」
…にしても、あの夢は何だったんだ?
パラレルワールド?もう一人の私?信じられないよ…。信じられないけど…
信じるしかなさそうな状況だよね。今はそれしか分からないわけだし…。
‘待って!!何処行くの?’
‘何処って…。帰る。日本に’
‘はぁ?何言って――’
‘半日しかいなかったけどさ、何だか面白そうな所だなって思って。しばらくあっちで暮らすよ’
そう言ってニコニコと呑気に笑っていたもう一人の自分の顔が頭から離れない。
ちくしょうっ!!んだよアイツ!!私の事なんて一つも考えてないよね?自分が楽しければいいと思ってるよね?あれも私なんて思いたくないわ!!
次に会ったら今度はただじゃおかないから…!!
まぁ、そうは言ってもどうしようもないんだけど。また夢に出てくる保障は無いし。
それよりも、これからどうしようかな…。
‘何かあったら奈良シカマルって男に相談しな’
‘必ず助けになってくれるはずだから――’
夢の中でもう一人の私が言った言葉を思い出す。
奈良、シカマルねぇ…。
とりあえず、今日はその人を探してみよう。
まぁ、ちょんまげ頭に目つきの悪い男なんて目星はついてるんだけど…。
―――――
微かな記憶の中から昨日辿ってきた道を辿り、私が一番最初に居た大通りについた。
ここならすぐに見つかるでしょ…。
そう思った私の考えが甘かった事に気付いたのはしばらく後の話。
「何でいないのォォー!!?」
結構な時間歩き回ったが、それらしき人は見つからなかった。いや、見つけられなかったのだ。
これだけ人がいれば目つきの悪いちょんまげ頭の一人や二人すぐに見つかると思ったのに、逆に人が多すぎて見つけづらい事に気がついたのは探し始めてから30分後の事。
あー、本っ当に馬鹿だな私。
ここしか場所知らないのに!!下手に動けば家に帰れなくなりそうだし…。
どうしよう…。
「おい、何やってんだ?また任務サボりか?」
「え…」
私が途方に暮れていると、後ろから誰かに声を掛けられた。実に面倒くさそうな声。
振り返って顔を見てみると、まさに私が探していた人物。そう、昨日のちょんまげ君。
「シ、シカマル…?」
「あ?んだよ」
「ちょ、ちょっと来て!!」
「あ、おい!!どこ行くんだよ!?」
名前を確認するとすぐに、シカマルの腕を掴んでその場から走り出した。
「はぁ…はぁ…」
「どうしたんだ?いきなり」
大通りから少し離れた、人通りが少ない場所に着くと、私はシカマルの腕を放して向き合う様に立った。
特に意味も無く全力疾走で着たので、息が少し苦しいけど。
「あの、さ…。はな、話が、あるんだ、けど…ゴホゴホッ」
「待て、一回落ち着け。俺逃げねェから。つーか、何で咳き込むほど走ったんだ?」
「大丈夫…。ちょっとテンションが上がっちゃっただけだから…」
少し時間を置き、息を整えてからもう一度。
「あの、話があるんだけどさ」
「…何だ?」
「実はね、私はアンタの知ってる桐沢琴音じゃないんだ」
「……は?」
シカマルはキョトンとした顔で私を凝視したまま動かなくなった。
「いや、意味分かんねーから。つーか何言ってんだお前」
「事実をそのままお届けしただけです」
「どこが事実なんだよ。お前はどう見ても桐沢琴音だろーが」
「うーん…。話すと長くなるんだけど…」
そこで私は一回言葉を切り、深呼吸してから今までのこと全てをシカマルに話した。
「…と、まぁ、こういう事があったわけです」
「その話は本当か?」
「私も未だに信じられないけど、信じるしかないよね。こうなったからにはさ」
「まぁ、そうだけどよ…」
一応は納得してくれたみたいだけど、やっぱりまだ少し半信半疑な様子。
無理もないよね。第一、当事者の私がまだよく分かってないんだから。
「あー、私に文句言わないでよね。自分でもビックリしてるんだから」
「いや、そうじゃねぇよ」
そう言ってシカマルは私の事を何かを疑うような目でジロジロ見てきた。
「な、何?まだ信じられないって?」
「いや、ただ…。見た目がそっくりだなーって…」
「そんなに似てる?」
「あぁ。似てるっつーより、むしろそのものだな」
「まぁ、私がオリジナルだもんね」
自分自身、私と見た目が全く一緒な人物がいることは違和感ありまくりなんだけど。
夢の中とは言え、実物を見ちゃったからには疑いようがない。
「で、これからどーすんだ?」
「どうしようかな…」
「五代目様にはまだ言ってねぇんだろ?」
「五代目様…?」
「綱手様。木の葉の里の長だ」
あー、確か昨日そんな名前の人に説教食らったんだっけ…。
「一応報告した方がいいんじゃねーか?」
「めんどくさいからいいよ」
「よくねーよ。ここは忍がいる世界だ。そしてお前も忍。もし何かあったらお前も任務に行かなくちゃいけねぇんだぞ?!」
「あ、その心配は無いと思うよ」
「何でだよ…」
「昨日その綱手様に説教食らったって言ったでしょ?その時に‘お前はしばらく私の雑用係だ!!’って言われたし」
昨日の様子からするに、もう一人の私は相当な何かを仕出かしたらしい。もうやめてよ本当に…。
「それに、」
「それに?」
「分身の私に出来てオリジナルの私が出来ないわけないでしょ?大丈夫だって」
そうニコッと笑いながら言うと、シカマルは何処か呆れたようすながらも口角を上げて笑ってくれた。
「これからよろしくね、シカマル」
木の葉の里に来て、2日目の出来事だった。
―――――
やっと3話ですねすいません(汗)
パラレルワールドの解釈が少し違うかもしれませんが、
そこら辺はどうかスルーの方向でよろしくお願いします;
←